「ブラジル人の誇りを持って」――ルシアノ・フェルナンドの目指すジャパニーズ・ドリーム
全国的には無名ながら、屈強な体と日本人にはない強いメンタリティでドラフト指名を待つ、ルシアノ・フェルナンド外野手(白鴎大)。関甲新学生リーグ歴代2位となる通算17本塁打を放った長距離砲のプロ入りに懸ける想いとは。
2014/10/23
Yu Takagi
性格は変わらなくても、考え方は変えられる
「精神的に強いし、取り組む姿勢がいい。素直だよね」
そう評するのは白鴎大で4年間フェルナンドを指導してきた藤倉多祐監督だ。
阪神・ロッテで選手としてプレーし、引退後はロッテでコーチとスカウトを務めた経験を持つ同監督はフェルナンドの可能性について、「これまでにもプロ野球選手を何人か送り出していますが、プロでも活躍できる可能性を大いに持っていると思います。バットスイングが速く、逆方向に強い打球が飛ばせる能力がある。こういったタイプの右打者はプロの世界でも少なく、チャンスは十分にあるはず」と語る。
精神面も大きく成長した。
フェルナンドはその猛打ゆえ勝負を避けられることも多々あった。中でも2年秋の明治神宮大会出場を賭けた関東地区代表決定戦では、当時横浜商科大の3年生だった西宮悠介(楽天)から痛烈なセンター返しの一打を1打席目で放つと、その後は3敬遠。チームも惜敗で全国出場はならなかった。
試合後の、「今日はすみません」と怒りを抑えながらも、どう感情を表現していいかわからない姿が印象的だった。
藤倉監督はそんなフェルナンドに、こんな声をかけた。
「過去のプロに行った先輩たちも、勝負を避けられてきた。四球などの出塁率でも充分チームに貢献できるんだよ。相手が勝負してきたら挑め。そうでもないのに追いかけるな」
そして、「それを飲み込んで、対応してきたのが今のフェルナンドじゃないですかね。彼は選球眼が良く、追い込まれてからも悪球に手を出しません。性格は変わらなくても、考え方は変えられるんです」と人間的な成長に目を細めている。
試合前後ではこちらを見つけると、「こんにちは。お元気ですか?」と声をかけてくれる陽気で気さくな誰からも愛されるキャラクターの好青年。
そのバットに様々な想いを込め、これまでの難局を乗り越えてきた。
念願の指名はあるのか――運命のドラフト会議はもう間もなくだ。