台湾の最新野球事情――知名度が高い大谷、中田。陽・チェン・郭らの活躍で日本野球は人気
現在、台湾で日本の野球はどのように見られているのだろうか。台湾国際放送(RTI)の日本人記者に聞いた。
2015/11/17
2012年から中華民国(台湾)の海外向け短波ラジオ放送、中央放送局の日本語放送、台湾国際放送(RTI)の記者、パーソナリティとして、台湾の多元的な魅力を日本に伝えている駒田英氏。
2006年に30歳を前に台湾に渡り、語学学校で台湾華語(中国語)を学ぶ。大学院では異文化コミュニケーションなどを研究し、卒業後にRTIに就職した。
また台湾在住ならでは台湾野球への知識、造詣の深さを買われ、この秋には『台湾プロ野球<CPBL>観戦ガイド』(ストライクゾーン編 論創社刊)の執筆にも参加した。
駒田氏に台湾の人々が日本野球をどう見ているか、話を聞いた。
日本対アメリカ戦は集客1万人越え。台湾では大谷や中田らが人気
――街中でNPB選手のポスターなどをよく見かけましたが、昔から人気があったのでしょうか?
メディアによる報道、中継という切り口から説明しましょう。
当時の事は当然知らないのですが、中華民国籍の王貞治さんの現役時代、その活躍は台湾でも新聞で詳しく伝えられており、日本の野球雑誌を購入する人もいたようです。1968年の春、読売ジャイアンツが台湾でキャンプを行った際は、キャンプ地の中部、台中市、そして紅白戦を行った台北市の球場には、とても多くのファンが押しかけたようです。
1980年代、台湾では「二郭一荘」と呼ばれる郭源治さん、郭泰源さん、荘勝雄さんが日本プロ野球に在籍した時代、テレビは三局しかなく、視聴環境は十分でなかったため、レンタルビデオ店では、なんと彼らの登板シーンを録画したVHSビデオが貸し出されていたとも聞きます。中には、パラボナアンテナを買って日本の某衛星放送のプロ野球BS中継を見ていた人もいたようです(苦笑)。
1990年代中盤、ケーブルテレビの放送が始まり、多チャンネル時代が訪れると、読売ジャイアンツや西武ライオンズ、福岡ダイエーホークス(当時)などのテレビ中継が行われるようになりました。
その後も、毎年必ず放送があったわけではありませんが、NPBに台湾選手が加入するとケーブルテレビ局でそのチームのホームゲームの中継がされています。私が台湾に来た年、2006年にも、林英傑(インチェ)投手 (現・中信兄弟)が、東北楽天ゴールデンイーグルスに加入したことをきっかけにテレビ中継が開始されました。
――日本戦には非常にたくさんの台湾のファンが来られていましたが、ブームのようなものになっているのでしょうか?
近年の日本プロ野球ブームはなんといっても、NPBを代表するスター選手となった陽岱鋼選手(北海道日本ハムファイターズ)の活躍によるものが大きいですね。
FOXスポーツは2014年から中継を開始、今年はファイターズのホームゲームを中心に、郭俊麟投手(埼玉西武ライオンズ)や陳冠宇投手(千葉ロッテマリーンズ)の先発試合、クライマックスシリーズも放送され、ほぼ毎日日本の野球が見られる環境と言ってもいいほどでした。
そもそも台湾には十数年、数十年来の日本プロ野球ファンという人も少なくありません。日本人のファンよりも詳しい方もいます。一軍公式戦にとどまらず、二軍戦やキャンプまで行くファンもいます。アジアウインターリーグや国際大会の際に日本の各球団や侍ジャパンのユニフォームを着て応援し、各球団の応援歌を歌うファンの人たちまでいます。
今回のプレミア12でも、海外チームの中で最も人気を集めたのは日本チームでした。空港やホテルでの「応援ボード」を持っての出待ちをする人のほか、コンビニで選手を目撃したファンの中には、写真をSNSにアップロードしている人もいました。
実際、台湾の試合の次に観客数を集めたのは日本の試合でした。もちろん台湾在住者を含む日本人のファンもたくさんいたとは思いますが、14日の日本、アメリカ戦はBグループの試合で唯一観客が1万人を超えました。台湾プロ野球の平均観客数がおよそ5000人ですから、その人気ぶりが伺えますよね。
――台湾で人気のあるNPB選手は陽岱鋼が1位として、日本人選手はどうでしょうか?
日本の選手では現在はファイターズの試合のテレビ中継がされている影響もあるので、大谷翔平投手や中田翔選手の知名度は人気は高いです。
ただ、台湾では主にインターネットメディアで、日本プロ野球のニュースが数時間遅れで報じられているほか、インターネットの掲示板でも議論がなされており、日本プロ野球のファンは、各チームのスター選手について、皆、よく知っており、人気のある選手をしぼるのは難しいですね。誰かの名前を挙げると「いや違う」と怒られそうです(笑)。
日本人メジャーリーガーですと、イチロー選手、ダルビッシュ投手、田中将大投手が人気で、街でTシャツを着ている人を見ることもあります。