高校球界から新たなスター誕生の予感――明治神宮大会で覚醒した大阪桐蔭の高山優希
明治神宮大会高校の部は、高松商の優勝で幕を閉じた。この大会には来年のセンバツや夏の甲子園で活躍を期待したい、好投手が多く出場した。
2015/11/21
高山の上を行く、寺島を目指して
その日と同じような状況が、この日、舞い降りてきたのだった。
1点ビハインドの9回表、西谷は、やはり、マウンドに向かう高山に、声を掛けた。
「先発とは違うんやから、スッと入るんじゃないぞ。全球全力で行け」
こうして高山の中に眠っていた才能が目を覚ましたということである。
スター誕生とは言いすぎだが、西谷監督は言う。
「藤浪のあの時の状況に似ていました。150キロが出た数字が正しいかはわかりませんが、1球でも(150キロが)出たということは、1球だけじゃなく、もっと投げられるようになるはずです。ああやって投げればできるんですから、大きな投手に育っていってほしい」
指揮官によれば、藤浪にも、高山にもどこかでセーブしようというメンタルがあるのだという。きれいにまとめたいという性格が、彼らの真の才能を閉じ込めていたが、したたかな演出により、彼らは目覚めたのだった。
「スピードが出たのは、自分でもよくわかりませんでしたが、今までとは違う感覚はありました」
高山は、この日のピッチングを尋ねられると、淡々とそう答えた。表情が変わらなかったのは高山らしかったが、「球速にはこだわらない」という彼の中には、新たな思考が生まれたのは間違いないだろう。
今年の大阪には、履正社の寺島成輝というドラフト上位候補と騒がれる投手がいる。同じ左腕で注目度は、高山の上を行く存在である。
「寺島投手は僕のもう一つ上のレベルにいる投手。今の自分はまだ及ばない。(寺島を)ライバルとして意識はしながら、これから、追いついて、追い越せるようになっていきたいです」と高山は意欲を燃やしている。
高山のこのピッチングで、霞んだかのように思えた今大会の猛者たちだが、例年に比べても遜色ないレベルにあったというのが印象である。