仙台育英・須江監督が語る“勝つ野球”の極意。「競技性の理解」から始まる野球論
2022/08/06
産経新聞社
得点を取るための打線の考え方
(中略)
得点に関わるのが、打線のバランスだ。足の速い選手、粘れる選手、長打が打てる選手、進塁打が打てる選手と、さまざまなタイプがいることで、レベルの高い好投手からも得点を奪うことができる。毎年、仙台育英はバランスのいい打線を組んでいる印象があるが、須江監督は選手のタイプを5つに分けて、打線の組み方を考えている。
・A=フォアボールを選べる出塁型
・B=AとCの中間
・C=ヒットを稼げるアベレージタイプ
・D=CとEの中間
・E=一発長打が魅力のスラッガー
「スタメン9人で考えると、A・Bが2人、C・Dが5人、Eが2人というバランスで打線を組むようにしています。その代の投手力にも左右されるところで、『ある程度の失点を覚悟しないといけないので、5点以上は取らないと勝てない』という状況のときは、DやEが増えることになります」
昨年秋のスタメンを振り返ってもらうと、CCDEBCCABになるという。Eはフルスイングが魅力の主砲・遠藤で、Dはパワーが武器の岡田大成である。
「中学生を見るときも、この観点で考えています。自分のなかで決めているのは、Eタイプは学年3人まで。だいたい、Eタイプは守備位置が限られていて、ポジションが重なってしまうところがあります。高校でメンバー争いをするときも、EタイプはEタイプのなかで争っていく。これは仙台育英に限らず、大学に行っても、プロに進んでも、ずっとついてくる話です。わかりやすく言えば、四番ファーストの座はひとつしかない。自分が何タイプで、誰に勝たなければいけないのかは、常に考えさせるようにしています」
Eタイプだからといって、打つだけではレギュラーの座は遠のく。
「どの選手にも、走塁は求めます。走力には限界がありますが、仙台育英のシステムを理解して、実戦経験を重ねていけば、状況判断はできるようになる。走塁ができないとメンバーに入れないことは、チームの共通理解として浸透しています」
就任当初から掲げるスローガンは『日本一からの招待』。日本一にふさわしい取り組みができたときに、「日本一から招かれる」という意味を込めている。走塁を磨き続けることが、得点に結びつき、得点を積み重ねることが、日本一につながっていく。