仙台育英・須江監督が語る“勝つ野球”の極意。「競技性の理解」から始まる野球論
2022/08/06
産経新聞社
「ニュアンスとしては『真剣に打たない』」
対ピッチャーの話を補足すると、高校野球の世界は「左腕が勝ちやすい」と長年言われ続けている。昨秋の関東大会では出場15校中11校の背番号1が左で、ベスト8進出校のエースはすべて左が占めた。しかも、140キロのストレートを記録した左腕は誰もおらず、キレ、緩急、コントロールで勝負するタイプだった。
「中学生のリクルートのときから感じることで、どの監督も左ピッチャーを探しています。それだけ、左腕が有利とわかっているのでしょう。やっぱり、対戦経験が少ないことは影響していると思います。バッティングピッチャーで考えても、右投手が多くなりますから」
しかし、対戦経験が少ない理由だけで、左がこれほど有利になるのだろうか。須江監督が考える「勝てる左」とは?
「『左はクロスファイアーが生命線』とよく言われますが、高校野球で勝つピッチャーはそこではないと思っています。生命線は右バッターの外の出し入れ。ストレートと、逃げる系のチェンジアップをコントロールミスせずに投げることができるか。インコースを中心にすると、甘く入ったときに長打になりやすい。外はコントロールを間違わなければ、試合を作ることができます。左バッターに対しては、外に逃げるスライダーが中心。結局、右にも左にも逃げる系の精度がカギになってきます」
バッターの目から遠いところで、どれだけ勝負ができるかがポイントになる。このタイプの左腕と対したとき、須江監督であればどのような攻略法を立てるか。
「ニュアンスとしては『真剣に打たない』ってことですね。つまりは、外のチェンジアップ、外のスライダーを振らない、追いかけない。アウトローの見逃し三振はオッケーにします。追いかけていったら、ピッチャーの術中にはまります」
この手のタイプは、ランナーを出しながらも、要所を抑えることが多い。点が入りそうで、入らない。そこで、「打ってやろう!」と余計な力を入れてしまうと、なおのこと相手のペースになる。(全編は書籍で)
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