クイック+送球が3.5秒以下ならアウト…専門家が語る盗塁論(3)筑波大・川村卓准教授
2022/08/19
筑波大学硬式野球部監督 川村卓准教授が語る盗塁の極意
動作解析を中心に、科学的な観点から野球を追求し続ける、筑波大学の川村卓准教授。硬式野球部の監督も兼任する同氏は、どのような視点、角度から走塁をアナライズしているのか。クイックや捕手の送球タイム、走塁における合理的な体の動かし方など、走塁のなかでも大きなウエイトを占める“盗塁”をテーマに深く掘り下げて聞いた。(7月21日発売『高校野球界の監督が明かす! 走塁技術の極意』より一部抜粋)
頭に入れておくべき盗塁の仕組み
──「走塁」をテーマにして、さまざまな角度から取材を進めています。川村先生にはぜひ、科学の視点から、「盗塁」の攻防についてお聞きできればと思います。まず、二塁盗塁を決めると考えたときに、ランナーにとって重要なポイントはどこになりますか。
川村 まずは、盗塁の仕組みを頭に入れておいたほうがいいでしょう。ピッチャーがクイックモーションでしっかりと投げて、キャッチャーが二塁ベース上にストライク送球を放れば、基本的にはアウトになる。目安のタイムとしては、クイックが1・4秒前後、二塁送球(キャッチャーの捕球から野手の捕球まで)が2・1秒前後、つまりは両方合わせて3・5秒以下であれば、盗塁を決めるのはかなり難しくなります。
──クイック1・4秒、二塁送球2・1秒と聞くと、少し遅いようにも感じます。もっと速いピッチャーもキャッチャーもいますよね。
川村 「ドラフト候補のキャッチャーが1・8秒台で放る」といった記事を目にすることがありますが、手動で計測したほうがタイムは速くなります。さまざまな論文で発表されていますが、0・2秒前後は速いタイムが出るものです。
──ストップウォッチで計っていると、びっくりするような速いタイムが出ることがありますが、完全に正確ではないということですね。
川村 そういうことですね。さらに補足すると、クイックが1・4秒であっても、ランナーはピッチャーが足を上げた瞬間にスタートを切れるわけではありません。何かの動きに対して反応するときに、訓練された人間であっても、0・3秒はかかると言われています。野球の場合は、二塁にスタートを切るだけでなく、けん制に対する準備もしなければいけないため、0・3秒以上はかかると考えるのが普通です。