「青春って、すごく密なので」仙台育英・須江航監督から“心に響く言葉”が生まれる理由【第1回】
2022/12/01
産経新聞社
「青春は孤」だった高校時代
須江監督の青春は――、苦い思い出のほうが多い。
「私の青春は、高校3年生の春から夏までのしんどかった日々です。そこまでは『青春は密』でしたが、その数カ月間は『青春は孤』。孤独の孤です」
2年生の新チーム始動時に、選手からGM(グラウンド・マネージャー)に転身し、監督と選手の間に立つ役割を担った。3年春にはセンバツ準優勝を成し遂げるも、そこからメンバーとメンバー外に溝ができ、チームはバラバラに。須江GMは、チームをひとつにするために、毎日のように怒り、叱り、集合時間に1秒でも遅れた選手を許さない徹底ぶりだった。
「当時の私は、コミュニケーションの取り方がわかりませんでした。厳しく接することしか、チームをひとつにする方法がないと思っていたんです。優しさのかけらもない人間で、同級生には本当に申し訳なく思います」
このときの苦い経験が、指導者の道に進むきっかけとなり、須江監督の土台となっているのは間違いない。八戸大では1、2年時にマネージャーを、3、4年時には学生コーチを務めた。選手としての活動は、高2の夏までだ。
それでも、選手時代の実績がないことが、「今となっては、私の強み。過去の栄光に浸ることは一切なく、過去を振り返る時間があるのなら、常に前に進んでいきたい」と語る。
《2回目に続く》
書籍情報
仙台育英高の須江航監督による書籍『仙台育英 日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり』が12月2日に発売される。今夏の甲子園で東北勢初優勝を果たし、旋風を巻き起こした注目校の指揮官が、独自のマネジメント術を明かす一冊となっている。
<有言実行!夢の叶え方>
基準と目標を明確化 努力の方向性を示す
選手の声に耳を傾け、主体性を伸ばす
データ活用で選手の長所・短所を〝見える化”
日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある
高校野球が教えてくれる、本当に大切なことを学ぶ
著者からのメッセージ
「日本一からの招待――。2018年1月に、母校・仙台育英学園高等学校の硬式野球部監督に就任したときから、掲げ続けているチームスローガンです。すなわち日本一は勝ち取るもの以上に、招かれるものである、と。日本一を成し遂げ、また優勝時のインタビューで話した『青春は密』というフレーズがクローズアップされ、さまざまなメディアで、私たち仙台育英の取り組みを紹介していただくようになりました。ありがたいことに、『須江航』という人間にも興味を持っていただく機会が増えました。本書は、仙台育英で実践する取り組みを一冊にまとめた書籍になります」
<目次>
序章 『日本一からの招待』を果たすために
第1章 人生は敗者復活戦―思考論
第2章 選手の声に耳を傾け、個性を伸ばす―育成論
第3章 日本一激しいチーム内競争―評価論
第4章 チーム作りは文化作り―組織論
第5章 教育者はクリエイターである―指導論
第6章 野球の競技性を理解する―技術論・戦略論
終章 幸福度の高い運営で目指す“2回目の初優勝”
『仙台育英 日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり』
須江航 著(仙台育英学園高等学校教諭、硬式野球部監督)
四六判/272ページ
2022年12月2日発売/1700円+税
【著者】須江 航(すえ・わたる)仙台育英学園高等学校 教諭 硬式野球部監督
1983年4月9日生まれ、埼玉県鳩山町出身。小中学校では主将、遊撃手。仙台育英では2年秋からグラウンドマネージャーを務めた。3年時には春夏連続で記録員として甲子園に出場しセンバツは準優勝。八戸大では1、2年次はマネージャー、3、4年時は学生コーチを経験。卒業後、2006年に仙台育英秀光中等教育学校の野球部監督に就任。公式戦未勝利のチームから5年後の2010年に東北大会優勝を果たし全国大会に初出場した。2014年には全国中学校体育大会で優勝、日本一に。中学野球の指導者として実績を残し、2018年より現職。19年夏、21年春にベスト8。就任から5年後の22年夏、108年の高校野球の歴史で東北地区初の優勝を飾った。