日本一は“再現性のない夏” 仙台育英・須江航監督が掲げる「2回目の初優勝」の真意
2022/12/19
産経新聞社
“日本一から招かれる”ために
「2回目の初優勝」の表現に違和感を持つ人もいると思いますが、「このチームで、初めての優勝を目指そう」という意味を込めています。秀光中で2014年に全中を制したあとにも、同じフレーズを使っていました。
「幸福度」は、本章でも述べたとおり、2018年に高校の監督に就任してから私が強く意識してきた言葉です。ここまで紹介してきたさまざまな取り組みで、選手ひとりひとりの幸福度を高めることに時間を注いできました。それでも、個人的には「まだ足りない。もっと高めることができる」と思っています。
そこを目指す過程では、忍耐や歯を食いしばって成果と向き合う苦しさから逃れられないこともありますが、「楽しい」「充実している」と心から思える時間を、指導者としてどれだけ提供することができるか。そのためには、もっともっと深い関わり合いを持ち、選手の言葉に耳を傾ける必要がある。わかりやすく言えば、これまでに比べて、「2.5倍の関わり合いを持つ」。新型コロナウイルスの感染状況を見ながらにはなりますが、私の自宅に呼んで、野球や人生についてとことん語り合うようなことも考えています。可能なかぎり多くの時間と空間を、彼らと共有したいと思っています。
幸福度を高めるためにも、勝つことは大前提になります。先輩たちが日本一を果たした以上、そこに並ぶ成績を収めなければ、幸福度は小さくなってしまうでしょう。選手たちにも、「日本一にならないと、幸福度は感じられないよね」と話しています。ただし、「勝たなければならない」という義務感を持つと、自分たちで重荷を背負うことになり、プレッシャーにもなりかねません。「物事の本質を追求し、心技体すべての条件を満たせたときに、〝日本一から招かれる〞」。この思考を今一度大事にして、2回目の初優勝を目指します。
書籍情報
『仙台育英 日本一からの招待』
定価:1870円(本体1700円+税)
2022年夏 東北勢初の甲子園優勝!
「青春は密」「人生は敗者復活戦」「教育者はクリエイター」「優しさは想像力」
チーム作りから育成論、指導論、教育論、過去の失敗談まで、監督自らが包み隠さず明かす!
『人と組織を育てる須江流マネジメント術』
<有言実行!夢の叶え方>
基準と目標を明確化 努力の方向性を示す
選手の声に耳を傾け、主体性を伸ばす
データ活用で選手の長所・短所を〝見える化”
日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある
高校野球が教えてくれる、本当に大切なことを学ぶ