須江先生と勝負している? 3年生左腕との「野球ノート」。仙台育英監督が語る2人の“関係性”
2023/01/27
産経新聞社
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第104回全国高等学校野球選手権大会で、東北勢初の日本一を達成した仙台育英高校。新チームも来春の選抜甲子園出場をほぼ確実に。同校を率いる須江航監督の手腕にも、大きな注目が集まる。本記事では、12月2日に発売となった『仙台育英 日本一からの招待』(須江航・著)から内容を一部抜粋して公開する。
日本一のキーマンとなった3年生左腕
甲子園の決勝で好投した斎藤蓉とは、いい意味でお互いの考えをぶつけ合いました。「斎藤の成長がなければ、優勝はなかった」と言えるぐらい、2022年のチームにおいてキーマンのひとりでした。
山形の酒田シニアの出身ですが、縁があって、中学2年のときからピッチングを見ています。当時は身長160センチほどで、ストレートも110キロを超える程度。それでも、私がピッチャーを見るときに重視する、「体重移動の際に横向きの時間を長く作れる」という技術を体得していて、腕の振りも柔らかい。小さいながらも体にバネがあり、芯の強そうな表情も魅力的でした。今後、体が強く、大きくなっていけば、間違いなく大学レベルでも活躍できると確信しました(中学生を見るときは、「大学野球で活躍できる選手かどうか」という観点を持ちながら、将来的な伸び幅をイメージしています)。
仙台育英に入学してから、フィジカルの強化によって着実に球速が伸び、2年生の秋には、同じ左腕の古川とともに投手陣の中心的な存在になるまでに成長しました。
しかし、マウンドに上がると、バッターと戦うこと以前に、自分がやりたいピッチングにこだわる一面が強く、いい球は持っているのに、大事な試合で勝てない。それが顕著に見えたのが、秋の東北大会準々決勝、花巻東(岩手)戦です。先発に送り出すも、ボール先行のピッチングで6回途中まで9四死球6失点。チームも2対8で敗れ、長い冬を過ごすことになりました。
斎藤は、「低めのストレート、空振りを取れる低めの変化球こそが長所であり、生命線」という考えを持っているピッチャーです。それ自体は悪くないのですが、すべてのバッターやカウントで低めを狙う必要はありません。ストレートで押し込めるバッターであれば、高めに投げることでフライアウトが取れ、ファウルや空振りでストライクも稼げる。状況によって、低めに投げなくてもいい場面がある。本人に、何度もこうした話をしました。
冬のトレーニングを経て、ストレート、スライダーのキレが上がり、力試しの場として臨んだのが3月下旬の関西遠征でした。しかし、準備万端で臨んだ智辯和歌山戦で、2回から制球を乱して、4回途中4失点で降板。試合中、「低く狙いすぎて、自分で劣勢のカウントにしている。低く投げようとしすぎ。高めでもいい場面、打たれてもいい状況があることを考えなさい」と改めて伝えました。低めを狙うことで、頭が早く突っ込み、腕が遅れて出てきてしまう。これが、コントロールを乱す原因になっていたのです。