タイブレーク導入推進は正しいのか? 大会日程延長と肩ひじ検診の厳格化の検討を
日本高校野球連盟は10月20日にタイブレーク導入を決定した。選手の体調管理が目的の一つだが、タイブレーク導入によって解決するのだろうか。先日、MLBと米国野球連盟はGM会議で、18歳以下のアマチュア投手を対象にしたケガ防止のためのガイドラインを発表した。今後、日本の野球界でもこういった視点で議論が活性化されることを望みたい。
2014/11/15
選手の健康管理を考えるならば、徹底したケガ防止対策を
投手を守るための選択肢である投球数や投球回数の制限について、高野連のアンケート項目に記載はあったが、本格的な検討には至っていない。
公立校や部員不足のチームは投手数が少ない、エースと同等の力のある投手がいないというのが理由だが、野球世界一を決めるWBCでは投球数による制限が採用されている。
好投手を豊富に抱える日本にはあまり影響がないものの、オランダ、ブラジル、中国など野球がそれほど盛んでない国は、エース格とその他の投手の差は大きい。
それでも前回のWBCでは、オランダがベスト4、ブラジルもあわや日本に勝とうかという健闘を見せた。同じ短期決戦だけに、やってみれば意外と思わぬ展開になるかもしれない。
もっともよい方法は「大会日程の延長」と厳格な「肩ひじ検診」ではないだろうか?
14年夏は台風で開幕が2日遅れたうえに休養日を1日挟んだ。ということは、現状でも大会中に休養日を2日設けたとしても、中止が1日なら予定されている大会期間に収まることになる。
1~2回戦の間は中2~5日あくので休養日は不要。3回戦全試合終了時に休養日を挟めば2日連投は準決勝、決勝の一度だけですむ。もちろん2日以上中止になった場合も休養日はそのままで、大会期間を延長するようにする。
阪神甲子園球場は阪神のものだが、今は京セラドーム大阪で主催試合を行っている。プロ野球の日程の問題があるならば、準決勝、決勝のみ阪神がロードで不在の週末を使って行うことも選択肢の一つではないか。
ちなみに、高校サッカーの全国選手権大会は準決勝の後、決勝まで1週間も調整期間が設けられている。万全のコンディションで決勝戦を戦えるためだ。経費の問題など課題も残るが、サッカーは可能で野球は不可能ということはないはずだ。
今年1月の星稜対富山第一は後半40分すぎから同点になり、延長戦にもつれ込む大接戦で、大いに盛り上がった。
もう一つは、「肩ひじ検診」だ。
なぜ高野連がここまでタイブレーク方式の結論を急ぐのだろうか? 急激に加速した展開を見ると、一刻も早く周囲からの批判の声を封じたいからというように感じてしまう。13年のセンバツで済美・安樂智大が772球を投げ、海外のメディアからも非難されたこともあるのだろう。
もしそれも要因の一つであるならば、タイブレーク方式の導入よりも見直すべきは、大会前の肩ひじの検査ではないだろうか。
14年夏は「投球に問題なし」と判断されたはずの盛岡大附・松本裕樹のひじはかなり悪い状態だった。レントゲン写真を各自に持参させ、強い「投球禁止令」を出さない現在のやり方は形式的なものであり、万全とはいえないのではないだろうか。
タイブレークで結論付けず、選手を守る方法を徹底的に追求してもらいたい。