問われる伝える側の姿勢。その見出しがドラフト候補をつぶす
ドラフトの時期に差し掛かると、その選手の評価を「○○二世」と表現するメディアが多い。しかし、その表現自体が当の本人を苦しめかねない。
2016/04/25
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夏の大会100年を控え大阪桐蔭の1年生がニュースで取り上げられた
高校野球の世界でも清宮幸太郎(早実)の活躍で現2年生に注目が集まったと思っていたら、再来年の夏の100回大会も見越してか、新1年生の話題が各地から熱っぽく聞こえてくる。岐阜の飛騨高山ボーイズから大阪桐蔭へ進んだ根尾昴(あきら)が話題の筆頭で、高校野球の世界では少なくとも公式戦で1球も投げても打ってもいない1年生に「怪物」の冠がついて語られる記事もあった。
去年から1年生でもベンチ入り可能になった大阪では1年生の春季大会出場が可能となり、起用にも注目が集まった。マスコミ関係者からチームへ確認の連絡も続いたようだが、春のデビューはなかった。「素質はあると言ってもまだ先月まで中学生。急ぐ必要はありませんし、もし、中田(現日本ハム)や森(現西武)の時から春に登録できていたとしても入れなかったと思います」。これは大阪桐蔭の西谷浩一監督の言葉だが、そんな現場の声とは別に早くも根尾はテレビのニュースでも紹介され、ここからは新聞雑誌でもさらに登場機会は増えていくだろう。
注目は高校野球にとどまらない。近年は中学硬式の日本一を決める通称ジャイアンツカップや、小学生の精鋭が集う12球団ジュニアトーナメントいった大会などもメディアで報じられることが増えた。昨年12月に行われた12球団ジュニアトーナメントでは戦前から130キロ超えの小学生がネット記事でも登場。実際に現地へ出向くと、九州のテレビ局がチームも含め、密着取材を重ねていた。
情報の時代、情報が早く、密になることは当然のこととして、情報が溢れる時代だからこそ、報じる側は扱いには慎重にしなければならない。特にネット記事はおひれをつけながら拡散し、残ってもいくからだ。いつどこで出たかよくわからない150キロや明らかに測定環境に信頼が欠ける150キロ。際立つ数字や、ゴジラ二世や松坂二世といった余りに大きな看板は、時にその選手の野球人生を狂わすことにもつながりかねない。
たかだか記事ひとつ、見出しひとつ、キャッチひとつ、とは言え、その選手に見合った評価、フレーズを……。
アマチュア選手への注目が高まる時期に、ふと、そんなことを思った。