JABA日立市長杯大会を制したのは地元・日立製作所。原動力は甲子園優勝経験ある二人のルーキー【横尾弘一のプロにつながる社会人野球】
4月15日から19日まで日立市民運動公園球場ほかで第39回JABA日立市長杯大会が開催された。日立製作所が8大会ぶり4回目の優勝を飾った。
2016/04/27
グランドスラム
高校・大学で活躍しながらもドラフト指名漏れ
甲子園のヒーローが、社会人でも強い輝きを放った。第39回JABA日立市長杯大会は、4月15日から19日まで日立市民運動公園球場ほかで開催され、創部100年目を迎えた地元・日立製作所が8大会ぶり4回目の優勝を果たした。節目のシーズンに都市対抗初優勝を目指すチームは首尾よくスタートを切ったわけだが、その原動力となったのが甲子園で優勝を経験している二人のルーキーだ。
東海大相模高2年夏、1学年上の一二三慎太(現・阪神)が中心のチームで甲子園準優勝を経験すると、3年になる翌春――。三番セカンドの田中俊太は、九州国際大付高との決勝でも3安打するなど打率.429のシュアな打撃で活躍。171cmと小柄ながら無類のパンチ力で五番レフトの菅野剛士は、決勝で右中間へダメ押しの本塁打を叩き込むなどシャープなスイングを印象づけ、11年ぶり2回目の優勝に貢献した。目立つ実績を引っ提げ、田中は東海大、菅野は明治大へ進学する。
2年時から出場機会を得た田中は、秋季リーグ戦で打率.310をマークしてベストナインに選出される。この時、JR東日本で活躍する実兄の広輔が、広島からドラフト3位指名されて入団。高校、大学の4年先輩で、背中を追ってきた兄のプロ入りは大きなモチベーションとなり、3年時には大学選手権で頂点に立ち、大学日本代表入りも果たす。目標がプロとなるのは必然だろう。投手の吉田侑樹、中川皓太、外野手の渡辺 勝とともにプロ志望届を提出。しかし、中川の巨人7位を皮切りに、吉田が北海道日本ハム7位、渡辺も中日から育成6位で指名されたが、田中の名前が呼ばれることはなかった。
一方、1年春から神宮の舞台に立った菅野も、2年春にベストナインを手にすると、大学選手権や神宮大会でも球足の速い広角打法で存在感を示す。4年春には打率.368、2本塁打8打点で2度目のベストナインを獲得。こちらも投手の上原健太、捕手の坂本誠志郎、ともに外野を守った髙山 俊と4人揃ってプロ志望届を提出する。
髙山は阪神と東京ヤクルトが1位で競合し、真中 満監督の早とちりで東京ヤクルトかと思われたものの阪神が交渉権を得る。上原も、高校生投手の1位抽選に2回外れた北海道日本ハムから指名され、坂本は阪神2位。そうして3人が高い評価を受ける中、残念ながら菅野を挙げる球団はなかった。