東の藤平、西のドラ1候補は履正社・寺島成輝。「まとまり」の男が化けて、甲子園初出場なるか【2016年夏各地区逸材ファイル5】
高校生NO.1左腕投手という称号を持つ履正社・寺島成輝。これまで甲子園の出場がなく、全国的には無名だが、スカウトの間では評判の投手だ。
2016/07/03
谷上史朗
来週末からは神奈川、愛知、大阪、兵庫が開幕
各地で一気に高校野球の夏が開幕。話題の男たちも続々と戦いの舞台へ上がってくるが、大阪では大阪桐蔭と2強を形成する履正社のエース寺島成輝が注目を集める。今年の高校生のドラフト戦線で「東の藤平、西の寺島」と評されてきた左腕だ。
寺島については1年の夏、リリーフ登板で8回1失点も敗れた大阪桐蔭戦から、今春優勝を飾った近畿大会まで14試合の登板を見てきた。練習グラウンドを訪ね話もたびたび聞いてきただけに、最後の夏にどんなピッチングをするのか。何より深い興味を持っている。
好投手であることは間違いない。
183センチの上背に、上半身の厚み、下半身の安定を感じさせる86キロの体。暴れることのないフォームから右、左を問わず打者のひざ元へ投げ切れる制球力。フィールディングや牽制も安定。春先、寺島の投げる試合を見ていたあるスカウトは「左でこれだけのサイズなのに荒々しさがないのがいい」と評していたが、現時点での寺島の最たる持ち味を一言で言えば「まとまり」ということになるだろう。
高校生の逸材を語るフレーズとしてはワクワク感に欠けるのは承知の上。ただ、「原石」「未完」「荒々しさ」……といった言葉はいかにも魅力的に響くが、そのタイプが例えばプロの世界で「大化け」するかと言えば、未完は未完、原石は原石のままで終わることが多いのだ。
現在、オリックスで投手コーチを務める酒井勉氏が以前、しみじみと口にしていたことがあった。酒井氏がスカウト経験を経て、オリックスでファームの投手コーチに就いていた時だ。
「スカウトの時はアマチュアの選手を見て、例えばプロへ入って鍛えれば、フォームを修正すれば、コントロールは良くなると思っていたんです。でも、ファームで指導するようになって、アマチュア時代にコントロールが悪い投手はプロになっても悪いし、逆にアマチュア時代からコントロールのいい投手はプロになってもいい。ここはほぼその通りになるとよくわかりました。コントロールこそ天性のもので、アマチュア時代に悪いものはいくら速い球を投げる能力があってもプロでは厳しいということです」
そこで寺島だ。
大型投手、それもスピードは豊かでも制球面でアバウトなタイプが多い大型左腕にして、コントロールの不安がない。フォアボールから崩れていくような場面は見た記憶がなく、昨秋の数字を振り返っても、大阪大会36回を投げ45奪三振で、四死球はわずかに4。当然、無駄な四死球を与えないから、失点も少なくなり、無類の安定感、高いゲームメイク能力へとつながる。