春夏連覇を狙う智辯学園の強さの源――敗戦を糧にする成長力と団結心【2016年夏 注目校ルポ】
第88回選抜高校野球大会で悲願の初優勝を遂げた智辯学園は、春夏の連覇を狙う。
2016/07/10
一戦一戦全員の力をあわせて
智辯学園の練習を見ていて感じるのは、その総合力の高さと守備への意識だ。特に時間をかけて入念に行うノック練習では、送球、キャッチングともにほとんどミスが出ない。エースの村上も、「甲子園でもチームの好守にいつも助けてもらった」と話すように、守備力の高さは奈良県内でも頭一つ抜きん出ている。
抜群の守備範囲を誇る好守の要である二塁手・納大地、1年生ながらレギュラーとして近畿大会で安定したスローイングを披露した遊撃手・高塚勢牧、強肩・強打の捕手・岡澤智基、驚異的な鉄砲型が魅力の外野手・青木雄大等で形成するセンターラインは強固。その礎を作ったのが、常にギリギリのラインを攻める厳しいノックが根底にあることは間違いない。
センバツ以降、公式戦で唯一の敗戦となった一戦がある。
6月5日に行われた春季近畿大会決勝、高校ナンバーワン左腕との呼び声高い履正社の寺島成輝の前に打線が沈黙。村上も高めの甘い球を打ち込まれ、0対6での久々の完敗。悔しさの残る準優勝に終わった。しかし、この敗戦を経て、昨秋の大阪桐蔭戦を重ねるように課題を見つめ直し、チームはまとまりを見せている。
村上は夏への想いをこう話していた。
「春を優勝して、周りからは連覇を期待する声もいただきます。ただまずは甲子園に出るために、一戦一戦全員の力を合わせることが大事です。僕の高めに浮いた球を痛打され履正社に負けて、その想いは一層強まりました。僕達はチーム全員で戦い抜かないと勝てないチーム。まずは、チーム全員で力を合わせて甲子園に出ることです」
敗戦を成長に変える春の王者が迎える夏の県大会。初の春夏連覇を目指すチームに慢心は一切ない。