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甲子園10年連続出場を目指す聖光学院(福島)。県内無敵の強豪が直面する苦しみ【2016年夏 注目校ルポ】

福島県伊達市にある聖光学院。2001年夏に甲子園初出場を果たすと、07年から15年にかけて、戦後最長となる9年連続夏の甲子園出場中だ。この夏は福島大会10連覇が懸かっている。「勝つことが当たり前」とされた中で、彼らは2016年の夏をどう乗り切ろうとしているのだろうか。

2016/07/08

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高橋昌江



史上指折りの打線だが、まだ目指すチーム像になっていない

 9年連続で夏の甲子園出場という偉業は、斎藤監督が99年に就任して以降、チームスタッフと歴代の選手たちで作り上げてきた輝かしい歴史だ。チームのモットー「不動心」は、動じない心ではなく、人間の成長過程にある幸不幸のすべてを前向きに受け入れられる心を養うこととし、選手に求めるのは、品格、佇まい、凛々しさ、雄々しさ……などである。

 斎藤監督自身が本を読みあさり、自己研鑽をする中で、これだ! と思うものはミーティングで選手に伝える。「そういう部分を追求しないと本当の野球選手は育たないと思う」と、その内容は宇宙論、地球論、自然論、人生論、運命論など幅広く、奥が深い。

 様々な観点から勝負の心得を説き、聖光学院を希望して出会った生徒たちを大切に育ててきた。それはいつの時代も変わらない。しかし、毎夏、甲子園に出場している事実による変化は確かにある。

 3年ほど前だっただろうか。斎藤監督がこんな話をしていたことがある。聖光学院には毎年、山下りや不眠合宿、壮行試合といった行事があるが、年々、その意義が薄れているというものだった。

 斎藤監督の言葉を借りれば「受け売り」になっている状態だという。先輩たちもやってきたことだから、これをやれば勝てるだろうという浅はかな考えを持つ選手が出てくるようになった。大切なのは、その本質であるはずなのに行われたという事実だけが残った。

「合宿で手を抜いている年もあったからね。でも、今年は一生懸命、やるんだよ。だけど、ピッチャーの不調からくる不安というのかな……。ここに来て、バッティングの状態は落ちているね。ただ、先週も金、土、日曜と合宿だったし、今も勉強合宿中。昨日も練習後、食事、風呂の後の21時から0時まで勉強会をやったんだけど、選手たちが自分たちで30分延長して勉強していたんだよ。今年はそういうのをちゃんとやる。だから、疲れが抜ければ状態が上がってくる気がするんだよね。今年は愚直にやるタイプだし、能力があるんだよ。攻撃力は(聖光学院)史上、指折りだよ」

 春先は2試合に1本ペースで本塁打を放つ選手がいたり、5月には右打者でライトポール直撃の満塁弾を放った選手がいたりと、楽しみな選手が多い。選手たちの力を斎藤監督は認めている。しかし、まだ目指すチーム像には近づいていないようだ。

「勝ちたい、甲子園に行きたいと思っているんじゃない? その時点で(試合の)プランが崩れると弱い。だから、試合後、『勝てないんだから、負けにいく潔さも必要なんだぞ』と言ったの。勝ちにいくからストレスがたまる。負けにいっていれば、受け入れるわけでしょ。プライドが高いから劣勢を受け入れられないわけ」

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