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「練習試合で一度決めて…」浦和実には“奇襲”がある。創部50年で初の甲子園「カーブはいらない」捕手に授ける9つの創意工夫

2025/03/14 NEW

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【写真:編集部】



浦和実・辻川正彦監督

高校野球 春の甲子園 最新情報

 昨春に低反発バットが本格的に導入され、約1年が経過しようとしている。同バットの導入で、得点数や本塁打数に変化が生じているが、その中で各校の指揮官はいかなる指導を行なっているのだろうか。今回は浦和実業学園高校の辻川正彦監督にインタビューを実施し、部員への指導法、選抜甲子園出場までの舞台裏に迫った。(取材・文:藤江直人)

 

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低反発バット導入が「不利になるとは思えなかった」

 
 予感が確信へと変わってきたのは昨年の夏だった。新人戦と埼玉県南部地区代表決定戦を勝ち上がり、練習試合では創価や国士舘、東海大菅生、日大二、堀越などの東京勢から勝利を収めた新チームを率いながら、浦和実の辻川監督は風向きが変わったと感じ始めていた。
 
 同じ埼玉県勢でも、全国から有望な中学生が集う浦和学院や花咲徳栄などの強豪校とは異なる戦い方を標榜してきた。辻川監督は「以前の飛ぶバットの時代でも、ホームランを含めた長打をどんどん打つようなチームは作れませんでしたから」と苦笑し、さらにこう続けた。
 
「バッテリーを中心として、送りバントや機動力を駆使してもぎ取った得点を守り抜いていく。僕が監督に就任した1988年から、目指す野球はまったく変わっていません」
 

 
 2年間の移行期間を経て、高校野球では2024年の春から反発係数が抑えられた新基準の低反発バットが正式に導入された。甲子園球場で出た本塁打数は、春の選抜が12本から3本、夏の選手権が23本から7本とともに激減している。この変化が、浦和実のスタイルに合致した。
 
「特に選抜の場合は、3本のうちの1本はランニングホームランでしたよね。相手校は打球を飛ばせなくなっていますけど、われわれはバットが変わる前から飛ばせなかったので、低反発バットが不利になるとは思えませんでした。むしろ低反発バットでの戦いがわれわれに合っている、味方をしてくれていると感じはじめたのは、夏休みが終わったあたりでした」
 
 こう語る辻川監督は、新チームの戦力にある程度の自信を抱いていた。4回戦に進出した昨年夏のチームでも先発を担い、完投能力もある石戸颯汰と駒木根琉空(ともに新3年生)の両左腕が注目されるなかで、引き続き正捕手を務める野本大智(同)の存在が大きいと指揮官は笑う。
 
「僕は投手に対して配球うんぬんは求めない。対照的に捕手にはとことん教え込む。これをやれ、あれをやれと教えるのではなく、これだけはやっちゃダメだとまず教える。そのうえで創意工夫を求めますけど、これはすごく細かいですよ。カウント球、誘い球、釣り球、見せ球、勝負球の5種類に緩急、対角線、残像、奥行きを加えた9つを、打者や状況によって組み合わせていく。配球がわからないとか、迷ったときにはベンチを見ろ、と野本には言ってきましたけど、昨年8月の練習試合のあたりから、あいつは僕のほうをまったく見なくなりましたよね」
 
 投手陣に対しても、特に球種において独特の指導を行ってきた。

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