「練習試合で一度決めて…」浦和実には“奇襲”がある。創部50年で初の甲子園「カーブはいらない」捕手に授ける9つの創意工夫
2025/03/14 NEW
【写真:編集部】
”カーブ”はいらない? 辻川監督が教え込む球種とは…
「カーブはいらない、と僕はいってきました。大きく曲がって落ちるような軌道じゃなければ、それはカーブじゃないし、必要ないと。代わりにスライダーの投げ方はしっかりと教え込みます。ストレートとスライダーに、あとは挟むボール。フォークじゃなくてスプリットでもいいし、スプリットも難しければまずはツーシームから始めて、それをちょっとずつ指で挟んでいく。さらにできる投手に対してはチャンジアップを覚えさせる。石戸がそうなんですよ」
ノーシードから勝ち上がった昨年の秋季埼玉県大会。甲子園常連校の浦和学院と激突した準々決勝で、先発した石戸は七回二死までパーフェクトピッチングを披露。駒木根との継投を考えていた辻川監督をいい意味で裏切り、散発2安打、114球で4-0の完封勝利に導いた。
右膝をあごの近くにまで引きあげる独特の始動から、テイクバックで腰を沈み込ませ、右手のグラブで左腕の出どころを隠すようにして投げ下ろす。ストレートの最速は130キロ前後。それでも相手打者を飄々と打ち取っていく石戸の姿に、辻川監督はいつしか継投を忘れていた。
「ベンチで横から見ていて、浦和学院の打者が焦っているのが本当によく分かりました。石戸のチェンジアップが遅いのもあるし、何よりも腕の振りが早いからどうしても先に振ってしまう。チェンジアップを強く意識してしまうから、ストレートに対してはいわゆる刺されるような感じになる。このチェンジアップが緩急になるし、奥行きにもなるし、残像にもなるんですよ」
山村学園との準決勝で駒木根が、西武台との決勝では石戸がともに完投。秋季県大会を初めて制した浦和実は、秋季関東大会1回戦で石戸-駒木根のリレーで宇都宮工(栃木)を4-2で撃破。準々決勝では茨城県王者のつくば秀英を、石戸が散発4安打に抑えて2-0で完封した。
3度目の秋季関東大会出場にして、初めてベスト4進出を果たした一戦で輝きを放ったのは、辻川監督が「練習を積み重ねるほど、どんどん上達する」と檄を飛ばし続けた守備だった。
浦和実が1点をリードして迎えた三回裏の一死三塁のピンチ。つくば秀英の3番・石塚大志が放った強烈なライナーが石戸の右足を直撃した瞬間、辻川監督は同点を覚悟した。