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「投手のスピードに興味がない」「誰を中心にという概念はない」千葉黎明・中野大地監督が目指す”ウチらしい野球”とは。創部101年で掴んだ初の甲子園 

2025/03/17

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【写真:編集部】



これは100%です」中野監督が徹底するセオリ-とは?

 
 「例えば無死一塁で送りバントを転がした場面で、一塁走者は絶対に二塁へスライディングする。これは100%です。スライディングをして立ち上がって、一塁への送球を見る。これがセオリーだし、それ以上の動きはない。スクイズで本塁へ向かう三塁走者も同じです。リスクを背負って1点を取りにいく場面で、スライディングをしないという選択肢はない。一死二、三塁で外野へ大きな飛球があがったときも、相手が三塁へ送球してくる状況を見越せば、三塁走者にはタッチアップから必ずトップスピードでスライディングさせる。他の高校野球の指導者の方々も同意してくれると思いますけど、ここまで徹底しているチームは、意外に少ないと思っています」
 
 打撃はどうか。2番の林や7番の岩田海翔(新3年生)らに加えて、山本、佐々木悠晴(新2年生)、大橋蓮(新3年生)のクリーンアップも指一本分はバットを短くもって打席に立つ。
 

 
 「私の指示です。ウチでバットを長くもつ選手はいません。そもそも、長くもつから長打が出るという概念が私にはない。速球についていけないのなら、短くもとうとずっと言ってきました」
 
 こう語る中野監督は、目指す打線として「すごみはないが、穴もない」を掲げてきた。
 
 「何よりも私は三振を嫌うので、選手たちにもその意識づけがある。足がある選手が多いし、例えヒットが出なくても点を取る、という野球を目指すなかで、27アウトのうち三振は穴をぽっかりと開けちゃうんですよ。相手投手にもよるけど、三振が6個、7個……7個はちょっと多いかな。まあ5個以内なら上出来ですね。逆に2桁を喫しちゃうとウチの打線では絶対に無理です」
 
 捕手を務めた高校時代は2002年の1年夏、2004年の3年春と甲子園に2度出場した。当時の拓大紅陵を率いた名将で、2019年1月に死去(享年67)した小枝守さんを、中野監督は「私のなかではいつまでたっても恩師であり、心の底から尊敬している存在です」と畏敬の念を捧げる。
 
 そして、小枝さんの教えのひとつである、孫子の兵法にもある「勝ちは知るべくして、為すべからず」を、2021年の年末に監督に就任した千葉黎明で、自分なりに発展させて継承してきた。
 
 故事の意味は「勝ちには必ず理由がある。勝ちたい、という気持ちだけではダメ」だった。そのなかで投手を中心とした守備と走塁、という答えに行き着いた。中野監督が言う。

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