「打てないなら…」甲子園初出場4強の浦和実は「すべてが手作り」。限られた環境で結果を出す辻川正彦監督の指導方針とは?
2025/03/28
産経新聞社

高校野球 春の甲子園 最新情報
今月18日から開幕している選抜甲子園は、順調に日程を消化し、28日に準決勝を迎える。そんな中で快進撃を見せているのが、埼玉県の浦和実業学園高校だ。甲子園初出場ながらも、実力校を次々と撃破してベスト4入りを果たした。だが、今や旋風を巻き起こしている同校の練習環境は、決して恵まれているわけではなかった。(取材・文:藤江直人)
月額1270円お得に観るならDMM×DAZNホーダイ[PR]
「すごいことになりました」甲子園で巻き起こる“ミラクル旋風”
一度でいいから校歌を歌いたい。辻川正彦監督が大会前に抱いていた願いをいい意味で裏切る形で、春夏を通じて初めて甲子園に出場した浦和実(埼玉)が快進撃を演じている。
1回戦で滋賀学園(滋賀)に3-0で完封勝ちし、念願の校歌を甲子園に響かせると、2回戦では東海大札幌(北海道)に8-2で快勝。26日の準々決勝では聖光学院(福島)を、延長タイブレークの末に12-4で撃破。ベスト4に進出するミラクル旋風を巻き起こしている。
「本当にすごいことになりました。こういう試合ができるとは思いませんでした」
甲子園常連校の聖光学院を破った直後。延長10回表に一挙8点を奪った決着を興奮気味に振り返った辻川監督は、無死一、二塁から犠打を含めて6連打を放った猛攻に声を弾ませた。
「いいバントを決めてくれて、橋口が打ってくれて、深谷も打ってくれた。自分の采配ミスを選手たちが消してくれた。本当にすごいと思っています」
怒涛の攻撃は6番・工藤蓮(3年)のバントから始まった。カウント1-2と追い込まれながら絶妙のバントを三塁前へ決めて、自身もこん身のヘッドスライディングで内野安打とした。
「ウチの攻撃はバントと機動力」
辻川監督の指導方針のもと、打順に関係なく全員が地道に積み重ねてきたバント練習を証明するシーン。そして、無死満塁から7番・橋口拓真(3年)が中前へ勝ち越し打を放つと、8番・深谷知希(3年)が前進守備のセンターの頭を越える走者一掃の二塁打で続いた。
「バッターの基本はセンター返し。低反発バットで打球が飛ばなくなったといっても、強く振って内野の間を抜けばいいし、あるいは外野の前にポテンと落ちてもいい。もし、打球が飛ばなくなったという選手がいれば、僕は『お前のスイングが鈍いからだよ』と伝えると思います」
こう振り返る辻川監督は、バットをふた握りも余らせる橋口とのやり取りを明かす。