「打てないなら…」甲子園初出場4強の浦和実は「すべてが手作り」。限られた環境で結果を出す辻川正彦監督の指導方針とは?
2025/03/28
産経新聞社
「サインに首を振ってもいいんだよ」それでも石戸投手は…
「野本が出すサインに首を振ってもいいんだよ、と石戸には言っています。エースクラスのピッチャーなら投げたいボールがあるはずだけど、石戸は首を振らないですね」
辻川監督の言葉が、野本を中心とするチームワークのよさを物語っている。そして、大会に入って無安打だった5番・野本が、今大会11打席目で放った3回の右越えタイムリー二塁打に続いて、延長10回には2死二、三塁から左前へ2点タイムリーを放ってリードを8点に広げた。
春の選抜初出場でベスト4に進出するのは、2014年の豊川(愛知)以来の快挙となる。埼玉県勢では、1988年夏の選手権で初出場ながらベスト4へと勝ち上がり、ミラクル大旋風を巻き起こした市立浦和(現:さいたま市立浦和)の再現を、浦和実が演じている。
奇しくも同じ1988年春に国士舘大を卒業し、保健体育科の教師として浦和実に赴任。野球部監督にも就任した辻川監督が、万感の思いを込めながら前を見すえる。
「相手は横綱ですからね。食らいついていきます」
関東勢が3校を占めたベスト4で唯一、優勝経験のない浦和実は28日の準決勝で、春夏合わせて優勝4回を誇る智弁和歌山(和歌山)と激突する。新3年生だけで29クラス、全校生徒数が2700人を超えるマンモス校が、4月に還暦を迎える辻川監督が「すべてが手作り」と胸を張る、創部50年目の野球部を中心にひとつになり、一世一代の戦いに挑もうとしている。
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