作新学院の今井、一気にドラフト上位へ。MAX149km遅咲き右腕が掲げる「球速以上に速いボール」【2016夏の甲子園注目選手】
2016年夏の代表校がそろった。これまで当サイトで紹介した選手やチーム以外にも、楽しみな逸材たちが大舞台を踏む。6年連続出場となった作新学院(栃木県)のエース・今井達也もその一人だ。突如としてドラフト戦線に殴りこんできた右腕は甲子園でどのようなピッチングを見せるのだろうか。
2016/08/03
原動力となった昨夏、ベンチ外の経験
1年間という時間は、高校生を劇的に成長させることがある。
作新学院の今井達也は、高校2年時から3年時にかけて大きく立場を変えた。チームが5年連続で出場を果たした昨年夏の甲子園大会直前、メンバーから外れたこの右腕投手は現在、ドラフト上位候補と高い注目を集めるまでになっている。
成長の跡は、宇都宮清原球場のマウンドに上がると一目瞭然だった。
国学院栃木と対戦した栃木大会決勝で7点リードの7回二死1、2塁、2番手として登板した今井は圧巻のピッチングを見せた。180cmの長身から右腕を振り抜き、自己最速タイの149kmストレート、縦横2種類のスライダーで打者8人から5つの三振を奪う。強いボールと鋭く落ちる変化球で打者を圧倒する姿は、まさにエースの佇まいだった。
驚かされたのは、動画サイトにアップされていた1年前の映像と、投げる姿が明らかに異なっていたことだ。映像ではこぢんまりとした印象を受けたが、実際のマウンドでは躍動しているから迫力が増して見えてくる。
「去年は上体が前に突っ込みがちだったので、左手の使い方を少し変えました。左手で壁をつくり、前に突っ込まないようにとやってきました」
変わった点は、投球フォームを見つめ直したばかりではない。走り込み、ウエイトトレーニング、投げ込みに重点を置き、投げる体力アップに励んだ。体の線が細いことを自覚し、筋トレと食事量を増やしてスケールアップ。結果、昨夏に66kgだった体重は70kgまで増加している。
こうして今井が投手として大きくレベルアップを果たすうえで、原動力となったのが昨夏の悔しい思いだった。
「甲子園のマウンドで投げたくて、1年間練習してきました。背番号1を背負ってあそこのマウンドに上がれると思うので、去年の悔しさも含めて、去年の分までしっかり活躍したいと思います」
人が成長するために必要なのは、現在地をしっかり把握したうえで、目標の場所を見据えていくことだ。