“関東左腕四天王”鈴木昭汰(常総学院)。悔しい春を経て「やられたらやり返す」最後の夏【2016夏の甲子園注目選手】
2016年夏の代表校がそろった。これまで当サイトで紹介した選手やチーム以外にも、楽しみな逸材たちが大舞台を踏む。春・夏連続出場を果たした常総学院の左腕エース鈴木は監督のサインをも首を振る強心臓の持ち主だ。
2016/08/05
最高のパフォーマンスを発揮するため、自分の時間を確保する
たとえば常総学院の選手たちは合宿所で暮らすなか、鈴木はグラウンドまで徒歩15分の実家から通っている。
「寮のみんなと仲良くする時間も大切だと思うんですけど、そういうのは学校生活とかでもやれていると思うので大丈夫です。お母さんがつくってくれるご飯は、自分が一番慣れているからたくさん食べられますしね。自分の家はずっと育ってきたところなので、一番落ち着いて寝られます。それに親孝行もしたいので」
チームで遠征に行っても、「プライベートは一人がいい」と個室にこだわる。そうして主張を貫く一方、エースの責任を重々理解している。「野球は仕事というか、結果を残さなければいけないもの」と涼しい顔でいう左腕は、グラウンドで最高のパフォーマンスを発揮するために自分の時間を確保するのだ。
試合の1週間前までは睡眠を6、7時間たっぷりとり、本番2日前は夜中の3、4時くらいまで起きていて、わざと寝不足になる。試合前日は夜の9、10時に寝床に向かい、熟睡して本番に臨むのがルーティンだ。
昨年のセンバツ前から行う独自の調整法は、睡眠だけにとどまらない。試合の1週間前から朝風呂に入り、柔軟をして肩の可動域を広げる。
さらに1日おきにピッチング、ノースローとメニューを組み、試合前々日はブルペンへ。前日はボールにまったく触らないのは、「肩を最大限軽くしたい」からだ。
そうした調整が実を結び、夏の茨城大会決勝では完封を飾った。甲子園を懸けた大一番で注目を集めたのが、高校通算63本塁打の細川成也との対戦だった。この試合でストレートにこだわった鈴木だが、細川には1、4打席目がスライダー、2打席目はストレート、ピンチで迎えた3打席目はチェンジアップで打ちとっている。
多彩な攻めでプロ注目打者を4打数無安打に封じ込めた姿を見て、センバツ前に話していたことを思い出した。鈴木は「投球術」へのこだわりを口にしていたのだ。
「どんなにいいピッチャーでも直球だけでは打たれちゃうんですよ、絶対。そこにチェンジアップだったり、打ち気をそらすシュートだったりをしっかりやっていったら、それが自分の良さになっていきました。でも自分の理想はパワーピッチャーかつ、躍動感あふれるピッチングです。そこに投球術があれば、もっといいかな」