甲子園出場を逃したドラフト候補。九州4人の本格派投手、北の大地のサウスポー、二刀流の逸材ら
7日に開幕する第98回全国高校野球選手権大会。寺島(履正社)藤平(横浜)ら甲子園出場を果たした選手もいれば、地区予選で惜しくも涙した選手たちもたくさんいる。甲子園でぜひ見たかった逸材たちをクローズアップする。
2016/08/06
1位指名候補との噂も。地区大会敗退の左腕
812人中470人。
一体何の数字か分かるだろうか?
正解は現在NPBに所属している現役日本人選手(育成選手含む)の中で甲子園大会(春・夏含む)に出場していない選手の人数である。割合に直すと56.3%。つまりプロ野球選手の半数以上は甲子園の土を踏むことなく、高校野球生活を終えているのだ。そして今年も甲子園未出場の逸材選手は数多く存在している。ここではそんな「甲子園で見たかった」選手を紹介したい。
早くから評価が高かったのが浜地真澄(福岡大大濠)、梅野雄吾(九産大九産)、山本由伸(都城)、太田龍(れいめい)の九州が誇る本格派右腕4人。それぞれ特長がある好投手だが、中でも一人を挙げるとなると山本を推したい。
身長は177cmと決して大きくはないが、バランスの良いフォームと強く柔らかい腕の振りは出色。常時140km台中盤のストレートと鋭く変化するスライダー、カットボール、ツーシームを多彩に操るピッチングは高校生離れしている。あまり報道されていないが、フォローの大きいスイングでバッティングも非凡。同じ名前の高橋由伸監督が率いる巨人が上位候補にリストアップとの報道も一部あったが、そのような話題性がなくても実力十分の投手である。
他の地域にも本格派の右投手は目白押し。関東では島孝明(東海大市原望洋)、近畿では才木浩人(須磨翔風)、平内龍太(神戸国際大付)、中国では小郷賢人(岡山・関西)などが代表格だ。島と小郷は秋から冬にかけてのトレーニングで体が大きくなり、それにともないスピードもアップ。ともにストレートの最速は150kmを超え、球威は間違いなく高校生のレベルを超えている。
逆に才木は、体つきは頼りないものの、長いリーチを縦に鋭く振ることができるのが長所でボールの角度は一級品。下半身が強くなって体重移動にスピードが出てくれば一気にボールの力もアップするだろう。故障に長く苦しんだ平内は、春以降に急成長。大型でありながら強く腕を振って変化球を投げられるところが最大の長所で、勝負所で三振を奪えるのは魅力だ。
サウスポーで最大の注目は北の大地に現れた豪腕・古谷優人(江陵)だ。昨年夏の帯広地区予選では2日間で延長15回(引き分け再試合)、延長12回を一人で投げ抜くなど道内では知られた存在だった。その後の秋、春は地区予選で早々に敗退するも、着実に成長を遂げ、最後の夏は地区予選を勝ち抜くと、北北海道大会2回戦で最速154kmをマーク。準々決勝では20奪三振とまさに圧巻のピッチングを見せた。準決勝で敗れたが、この快投でプロからの評価も一気に上昇。1位指名候補との声も聞こえてくるようになった。お世辞にも野球が盛んとは言えない幕別町の全校生徒約300人の小さな高校から、このような投手が出てくるというのは本当に驚きであり、日本の高校野球の裾野の広さを感じずにはいられない。