夏の甲子園、球児の健康面の課題はベンチ入り選手増で改善可能【小宮山悟の眼】
近年、温度が上昇し、炎天下で球児がプレーすることに対して心配の声が増えている。小宮山氏は、安全で、楽しく野球ができる環境にするための改善策が必要だと考えている。
2016/08/14
改革の余地はある
では、どうやって改善していけばいいのか。
私はベンチ入り選手数を増やせばいいと考える。そんな単純なことで問題が解決するのかと思うかもしれないが、かなりの影響があるはずだ。
たとえばプロ野球と同じように25人までベンチ入り可能になれば、7、8人は投手として登録されることになる。もちろん、チーム編成の仕方は監督によるが、一般的な監督ならば、投手を増やそうと考えるだろう。
なぜ1人のエースばかりが連投するような事態が起こるのか。それはチーム内にそのエースに匹敵するような投手がいないからだ。
今のシステムだと、優秀な中学生投手たちは、高校進学に際し、お互いに「あいつがいたらエースになれない」「甲子園に行ってもマウンドに立てなければ意味がない」と考え、分散する傾向にある。
しかし、プロのようにベンチ入り人数が増えれば、同じような実力を持った投手が集まり、エースがチーム内に何人も誕生するだろう。それが甲子園への近道なのだから、強豪校に有望選手が集まる傾向はさらに強まるはずだ。
部員数が25人集まらない学校が出てくるかもしれないが、そういう場合は近隣の同じような事情の学校と合同チームを組めばよいだろう。
また、それと併せてアメリカのNCAA(全米大学体育協会)のように、野球部の規模や実力によって、いくつかのディビジョンに振り分ける制度の導入も提唱したい。
高校野球の根底には平等の精神があるので、地区予選では、甲子園出場を本気で狙う強豪校と、部員を9人集めるのもギリギリのような弱小校が対戦することもある。
文字通り野球にすべてをかけている選手が集まったチームと、野球を普通の部活動として捉えているチームの試合は、本当の意味で平等だろうか。何十点もの差がついて、5回までしかプレーできないような試合が、本当に正しいのだろうか。
ベンチ入りできる選手の数を増やし、現在よりもさらに、強豪校とそうでないチームとの区別化を図る。
同時に同じレベル同士のチームで試合をして、その中でチャンピオンを決める、ディビジョン制を導入する。
野球がすべてと考え日々、猛練習に励む球児もいれば、野球は好きだけれど、野球以外のことを犠牲にしてまで取り組むつもりはないと考える球児もいる。仲間と楽しくプレーできればいいという球児もいるだろう。
区別化することは、一見すると不公平に映るかもしれない。だが、実はいろいろなタイプの球児にとって、安全で楽しい野球ができる環境につながる一つの方法ではないか。私はそう考える。
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小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。