佐賀北に大逆転負け。敗者となった広陵・野村祐輔(広島)・小林誠司(巨人)が選択した1球の背景【夏の甲子園決勝の記憶】
2007年夏の決勝、広陵対佐賀北は球史に残る一戦となった。敗北を喫した広陵は、野村と小林のバッテリー。今はカープとジャイアンツでプレーする2人は、あの日あの時何を感じたのか。
2016/08/21
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2人はそれぞれチームの中心選手へ
あの衝撃的な試合から9年の月日が流れた。
野村は現在、ハーラートップタイの12勝を挙げ、6月の月間MVPに輝くなどの活躍をみせている。
小林もケガの離脱があったにせよ、歴史と伝統を誇る巨人の正捕手としてチームを引っ張っている。
二人がこの試合の時のことを回想した言葉が忘れられない。
「あれが僕の人生なんだと思います。あそこでスライダーを投げたのも、スローボールを投げたのも、僕の人生なんです。あの舞台を経験できたので、それからは、勝ちにこだわるようになりました。強くなれたっていうのは自分の中にあります。僕も小林も、プロに入る夢を果たせたので、いい経験をさせてもらったのかなと思います」(野村)
「成長していくために、必要な経験をさせてもらった特別な試合だった。あそこで優勝していたら、僕の野球人生はどうなっていたやろって時々考えるんですよ。でも、あのあと、みんなで言い合ったのはこれから先々の人生で『それぞれの日本一を目指そう』って。僕らは、佐賀北の選手たちには、できない経験をしたんだって気持ちがありました。『あそこで負けてよかった』とそう思える人生にしたい」(小林)
1球のボールで人生が変わる瞬間をみた。
ただ、それはあの1球の勝敗だけで物事を見た限りの話である。
人生は続く。
生きるヒントを得た野村、小林の二人は今、その生きざまを、示している。