プロ志望届を出さなかった逸材。甲子園2試合連続完封の早川隆久、センバツV腕・村上、夏準V北海の大西健斗ら
ドラフト会議で指名を受けるために義務づけられているプロ志望届の提出が、高校生・大学生ともに6日で締め切られた。中にはプロが注目するであろう逸材でありながら、志望届の提出を見送った選手もいる。
2016/10/06
大豊作の大学生
今年は大豊作と言われる大学生はことのほか多くが志望届を提出し、指名を見送ったのはごく少数だ。
昨年ほどの驚きはないが、数名を挙げていこう。
意外な名前でいうと、笹川晃平(東洋大)だ。
浦和学院高時代は3度の甲子園出場は見事なのだが、彼の実績はそれだけではない。
高校時代に、大谷翔平(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)、北條史也(阪神)、田村龍弘(ロッテ)らとともに、U18高校日本代表の一人だった。当時のメンバーで大学に進学したのは、笹川以外にも、金子凌也(法政大)佐藤拓也(立教大)がいるが、彼らはプロ志望届を出している。
さらに、笹川は大学進学後も2014年にU21日本代表にも選出されている。
この当時のメンバーには、先にもいた北條のほか、田口麗斗(巨人)、近藤健介(日本ハム)、牧原大成(ソフトバンク)、そして今年のドラフト上位候補の山岡泰輔(東京ガス)と居並ぶ。
いわば、笹川はプロが約束されているような選手だった。
しかし、彼は志望届を見送った。2年春には2部リーグながら4割を超える打率をマークするなど活躍したが、昨春から不調に陥った。春は打率.189に終わり、秋は.220とやや持ち直したものの、1部に上がった今春は.209と低迷した。そのあたりの成績でいまいち自信をつかめなかったのだろう。それは致し方のないことだ。
例えば、広島の田中広輔も同じようなパターンで、大学の4年時は全く結果が出なかった。
そのために、早々に社会人入りを決めたが、2年後にプロからの指名を受け、今やリーグチャンピオンのレギュラーだ。
需要の多い「右の外野手」としての期待も高い。2年後にはどの球団も欲しがる選手になってほしい。
大学日本代表の捕手二人、牛島将太(明治大)、森川大樹(法政大)も志望届の提出を見送っている。
明大の牛島は、昨年まで坂本誠志郎(阪神)の陰に隠れていたものの、大黒柱がチームを去るとメキメキと成長した。エースでドラフト1位候補の柳裕也を巧みにリード、その他の投手陣もうまく操り、春のリーグ制覇に貢献した。リーグ戦では5本塁打を放つなど守備面だけでなく打撃面の成長も著しい。日本代表の捕手としても活躍した。高校時代から無名だったこと、頭角を現したことのが遅かったのも影響したのかもしれない。現在プロ野球界は捕手不足にあえいでいるだけに、2年後の成長を期待したい。
大学日本代表を控え捕手として盛り上げた森川も社会人へ進む。
彼のような元気者タイプはおそらくチームには一人必要とされるはずだ。 社会人で研鑽を磨き、どこまで成長できるか。
昨年のドラフトでは谷田成吾(JX―ENEOS)や菅野剛士(日立製作所)、藤岡裕大(トヨタ自動車)といった大学球界の逸材たちがまさかの指名漏れとなるなど、波乱の起きたドラフトだった。
ドラフトは上位指名の事情で大きく変わる怖さを秘めているが、今年の志望届の数を見ていると、そう平穏なドラフトには終わらないだろう。
今年1年のドラフト戦線を沸かせた有望な選手たち、そんな彼らの”リ・スタート”もまた今後のアマチュア野球界を見て行く楽しみの一つといえる。