【ドラフト交差点】超高校級、4者4様の個性あふれる“九州四天王”の進路選択。九州地区は今年も大豊作
2016年度のドラフト会議が20日に迫っている。この1年を振り返ると、様々な選手たちがドラフト戦線に名乗りを上げた。各地区でしのぎを削り運命の日を迎える。そんなドラフト候補たちをリポートする。今回は”超高校級”と評された九州地区の4人だ。
2016/10/13
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独特の嗅覚、先発マウンドで光る男
スライダー、カットボール、チェンジアップ、カーブ、スプリットを操る。最速は146キロ。小学生時代から投手一筋で、福岡大大濠では1年秋から主戦のマウンドへ。投手としての場数は4人の中でもっとも踏んでおり、その経験に裏打ちされたゲームメイク能力こそが濵地の最大の長所といっていい。
3年春は九州大会で優勝。大会直前に肩の痛みを発症した濵地は、2試合に先発し1完投。故障の影響や調整ミスからバランスを乱しながらも、通算3試合18回1/3を投げて自責2に抑えた。「そのへんがじつに濵地らしい。試合展開を読む力、流れを感じる嗅覚が、ずば抜けて高い投手。悪いなりにも負けない投球ができる」と八木啓伸監督は語った。
人はひと言で「ギアチェンジが上手い」と片付けてしまいがちだが、教えられて身に付くものではない「勝負どころの感性」が、濵地の場合は並外れて研ぎ澄まされているのだ。
また、濵地には独自のルーティンがある。マウンドに上がると必ず捕手に背を向け、右手でそっとプレートに触れながら何事かを瞑想する。その後、起き上がりながら息を吐いて大きくジャンプし、両手を広げて肩甲骨を後ろに2、3度引っ張るような仕草をして、ようやく投球練習に入っていく。
このように、濵地は自分の空間を非常に大事にする投手だ。それだけに梅野や山本、太田といった同地区のライバルの存在を気に掛ける以前に、まずは自分自身の能力を高めることに没頭することができたのかもしれない。
「出ることが宿命だと思っていた」という3年夏の甲子園出場を逃した後、ショックを振り切ることができずプロ志望届の提出は梅野、山本に対してもっとも遅い9月30日だった。
山脈のような堂々たる威容で我が道をひたすら突き進んだ男が、珍しく揺れた。ただ、そのゲームメイク能力とは、プロの先発マウンドに立った時に最高の輝きを放つはずである。