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「お金じゃない!」豪州プロ野球を支える日本人と、豪州からアメリカを目指す日本人

オーストラリアプロ野球リーグ(ABL)の国際渉外部長を務めるデニー丸山氏は、日本とオーストラリアの野球界をつなぐ架け橋となっている。そしてそんな丸山氏を頼りに、ABLからアメリカでのプレーを目指す日本人投手がいる。

2015/01/14

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Satoshi Asa



MLBの傘下、ABLには日本球団の選手も参加

丸山は、笑って当時を振り返る。
「市長から2年だけ頼む、あとは市が引き受けるからって言われてね。あの時は、家も何軒か、持っていたバス会社も売って金作ったんだけどね」
 
 結局、約束した市長は次の選挙で落選、水泳選手を一族にもつ新市長は、野球には興味を示さず、プールを造ってしまった。
 球団のほうは、ミルウォーキー・ブリュワーズで正捕手として活躍したデーブ・ニルソン(元中日、登録名ディンゴ)が受け継いだ。この後、この豪州球界のレジェンドは、行き詰ったリーグ全体まで引き受け、1999年、「インターナショナル・ベースボールリーグ・オブ・オーストラリア」として、再出発させたが、これも実質2シーズンで頓挫してしまった。
 
 そういう背景もあって、現在のABLは75%の出資をMLBから受けている。そのため、事実上のファームといっていい立ち位置にある。8割方の選手は、MLB傘下のマイナーリーグの現役プレーヤーか、元選手。「インポート」と呼ばれる外国人選手もその大半は、プロ経験の浅いA級を中心とするマイナーリーガーだ。
 
 ルーク・ヒューズ(元ツインズ)、ジャスティン・ヒューバー(元ツインズ・広島)など「元メジャー」は何人かプレーしているものの、基本的に一定レベルの選手はMLB球団から参加を許可されないので、マイナーでいえばA級からせいぜい2A級のいうレベルから脱しきれないが、それでもプレーの質は年々向上している。
 
 丸山自身は、今後のリーグ運営について「日本とのパイプを強化すべきだ」と言う。ABLのシーズンは、MLBのオフシーズンに合わせ、ワールドシリーズの終わる10月末に開幕、スプリングトレーニングが始まる2月初旬までにチャンピオンシップを終える。このこととは、アジアのプロリーグにとっても、このリーグで成長株に試合経験を積ませることできることを意味する。
 発足当初のABLには巨人、ソフトバンクの両球団が選手を派遣、これに韓国の名門・ロッ テも加わっていた。しかし、現在日韓の名門クラブは撤退してしまった。それにかわり、今季は休止された台湾ウィンターリーグに代わる選手の育成先を探していた西武と、豪州球界と太いパイプをもつ星野仙一が監督を務めていた楽天が若手選手を派遣している。これに加えて、台湾の新興球団、義大ライノスが不振に陥った一昨年の最多勝投手、林晨樺(リン・チェンファ)をはじめとする4人をABLに送り出している。
 
 このようなアジア各国のトップリーグだけではない。丸山の視線は、独立リーグやアマチュア選手にも注がれている。
 
「まあ、望みは薄いんだけどね。でも、俺は、金にならない努力をする奴が好きなんだ。若い奴の夢は大事にしてあげないとね」
 
 学歴と学卒後すぐの正社員というパイプラインを辿ること以外に将来の展望を見いだせない故国に対する丸山の思いは複雑だ。だからこそ、丸山は自らを頼ってくる者に門戸を開いている。
 
 これまでパイプラインから零れ落ちた幾多の若者が丸山の門を叩き、それをきっかけに自らの人生を切りひらいている。その中には、ゴールドコーストで野球をプレーした者も多い。今年デーブ・ニルソンが監督を務めるABLのブリスベン・バンディッツで中継ぎ投手としてプレーしている後藤真人もその一人だ。

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