0対91にも溢れる希望。「きっかけは不登校」監督自ら発足した”日本で3番目に弱い”野球部が歩む道
甲子園球場で第89回センバツ高等学校野球大会(センバツ)が開催されているが、高校球児たちの春は全国大会だけではない。各地区では、県大会の予選が行われている。
2017/03/31
豊田毅監督
不登校を解決するために野球部創設
県大会出場を目指すも、未だ公式戦未勝利どころか1得点もあげたことがない高校がある。それは野球未経験者5人から始まった、三重県伊勢市にある英心高等学校だ。
英心高校は他校で不登校になった生徒や、諸事情で学校に行けなくなった生徒の受け入れを行っている。そんな同高校に野球部を創設したのは、2015年のことだった。
「きっかけは、不登校を解決するためでした」
そう話すのは、英心野球部で指揮を執る豊田毅氏だ。何らかの理由で学校に通えない生徒が多いため、全力で何かに打ち込むことで自分を変えていってほしいという想いを込めて、軽音部顧問から野球部の監督に転身したという。
最初は野球経験のない軽音部の生徒らが集まった。自分を変えたい一心で始めた英心高校野球部は、人数も足りず、環境整備もできていないなか、みんなで一から野球部を、グラウンドを作っていった。
豊田監督は「人間を育てるためには野球が一番」だと考えている。その理由は、技術面はもちろんだが、探求心を持った個々の成長も必要不可欠なうえ、それだけではなく、他人と協力しプレーすることでチームワークを養うことができるからだという。
「自分たちが何かを発信することで、それを励みにしてくれる人がいれば」と、監督はTwitterを始め、野球部の活動や選手たちの成長の様子を公開している。野球が好きな人はもちろんだが、創部当時から応援してくれている人、活動を知って激励してくれる人、そしてTwitterを見て「もう一度野球をやりたい」と英心に転校し、入部してくれた生徒もいる。
3月28日現在で部員は新3年生2人、新2年生7人、マネージャー1人と、その活動は他の生徒たちの心も動かし始めている。