プロのスカウトも注目する「関甲新のダルビッシュ」 無印の大型右腕・吉田慶司郎(常磐大)【2015年ドラフト・隠し玉大学生①】
多くの好選手をプロ球界へ輩出し、2013年春には上武大が日本一に輝くなど近年レベルの上昇が著しい関甲新学生野球リーグ。そのリーグでプロ球団スカウトから高い注目を集める無名の大型右腕がいる。
2015/02/18
Yu Takagi
寡黙な男がプロ入り宣言
その石川監督が「1から10まで教えてあげなきゃいけないような子だし、あんまり喋るタイプではないんだが、人間的にも成長したのかなあ」と昨年12月に行われた納会を振り返る。
その挨拶の席で、吉田は部員・関係者を前に堂々と「来年活躍し、プロに行く」と宣言した。吉田本人にそのことを冒頭に尋ねると「あぁ、なんというか……。プロは大学に入った頃から意識していましたが、(目標を公言することで)気持ちの面からも変えていこうと思いました」と答えた。
吉田にとって単独のインタビュー取材はほぼ初めてということもあり、たどたどしい口調ながらも、以降も熱のこもった話が続く。
「フォームでは気づかずにインステップとなっていたので、踏み出す足の位置に気をつけ、体の開きをギリギリまで抑えることを意識しています。あと1番の課題は制球力とスタミナですね」
世界的トレーナーと取り組む肉体改造
その課題克服のための肉体改造に二人三脚で取り組むのは水戸市にあるトレーニングジム『マグノリア』でトレーナーを務めるホルスト・ギュンツェル氏だ。
かつての東ドイツでナショナルコーチを務め、東西ドイツ統一をきっかけに来日。野球界では広沢克己(元ヤクルト、巨人、阪神)、井川慶(オリックス)、他分野では雅山(大相撲・元大関)、国枝慎吾(車いすテニスプレーヤー)ら多くのアスリートをサポートしてきた名伯楽。
そんなホルスト氏は「パワー、スピード、ストレングス、コーディネーションバランスはグッド。でも、私がこれまで教えてきた国枝らプロフェッショナルに比べると、スタミナや向上心はまだ“学生”。それを優しいトークでサムタイム言っています(笑)」と吉田の現状と課題を語る。
一方で、ジムを運営する矢口隆人専務取締役は「体を酷使していないし、まだまだ体が出来上がっていく伸びしろがすごくある」と大きな可能性を語り、これにはホルスト氏も大きくうなづいた。
ジムでの吉田は、休憩中にホルスト氏のジョークに笑みをこぼしながらも、シンプルでありながらも緻密に組まれたトレーニングメニューを黙々とひたむきにこなす姿が印象的だった。
「寝ることは大好きで、何時間でも眠れる」「自分の性格ですか?うーん、優しいですかね(笑)」とマイペースで穏やかな人間性も感じる一方、その大きな体に宿る闘志と眠った才能には、大きな期待を抱かせる。そして、それは周囲の人間だけでなく、何より吉田自身がその予感をひしひしと感じているはずだ。