投球過多に一石投じた公立・彦根東の”複数投手”。今夏の象徴は「全員戦力」の総力戦【全国高校野球】
第99回全国高校野球選手権大会は、花咲徳栄が埼玉県勢として初の優勝を飾り、幕を閉じた。大会記録を更新する68本塁打が放たれ、「打高投低」の傾向が表れた今大会だが、投球過多など高校野球の課題に一石を投じる戦略が見られた。
2017/08/24
投球制限は不公平なルールか
ついに「0」を記録した。
今大会、2試合以上を戦ったチームで、1人の投手が全試合を投げたチームが一つもなかったのである。
これは今大会の投手レベルが高水準ではないことも影響しているが、複数投手を育てる意義を各チームが感じつつあるということの証左なのかもしれない。
「一つのメッセージになるのかなと思っています」
開幕戦に勝利し、2回戦に進出した彦根東(滋賀)の村中隆之監督は語る。県内有数の進学校として知られ、3年前の夏に初出場を果たし、今大会は甲子園の初勝利を挙げた。彦根東は、県大会から甲子園まで複数投手で戦った。
昨今、高校野球の投手の登板過多はあらゆるところで問題視されている。2013年春のセンバツで、済美の安樂智大投手(楽天)が1回戦で234球、1大会約900球を投げ、日米のメディアを股に掛けて話題となった。今年の春も延長15回引き分けという試合が相次ぎ、1試合で190~200球を投げる投手が続出した。
対策の一つとして取りざたされたのが、投手の球数制限だ。制限を設けて、選手の身体を守るという考えは極めて全うなように思えたが、日本高野連や世間には反対の意見が多かった。
選手をたくさん抱えることができる私学はいいが、公立校にはそれだけの投手を育てることができない――。だから“不公平なルール”だというのである。「育てる」努力をせず、決めつけのような意見には賛成できないが、この机上の空論が世間では正論のように伝えられていたのは事実だった。