投球過多に一石投じた公立・彦根東の”複数投手”。今夏の象徴は「全員戦力」の総力戦【全国高校野球】
第99回全国高校野球選手権大会は、花咲徳栄が埼玉県勢として初の優勝を飾り、幕を閉じた。大会記録を更新する68本塁打が放たれ、「打高投低」の傾向が表れた今大会だが、投球過多など高校野球の課題に一石を投じる戦略が見られた。
2017/08/24
公立でも複数の投手を育てられる証
しかし、今大会の彦根東は違った。
公立校であり、県下有数の進学校。中学時代に野球で活躍し、約束を取り付けた選手が必ず入学できるわけではない。すべては運命にゆだねられているといってもいい。そんなチームが県内の強豪私学を破って甲子園出場。そして、複数投手で甲子園2試合を戦ったのは一つの例を示したといえるのではないか。
「これまで1人の投手でやってきたんですけどなかなか厳しい。複数の投手を何とか育てて、夏の大会の上位に食い込んでいくことを目指した。今年は、基本的にはエースの増居が投げることが多いですけど、1試合目に投げて、次も1試合っていう風には考えなかったですね。1年前からそう考えて育ててきた」と村中監督は言う。
彦根東は開幕戦では2年生エースの増居が完投したが、2回戦の青森山田戦では原功が先発し、3人目でようやく増居を投入するという継投を踏んだ。「県大会でもそうしてきたから、戦い方を変える必要はなかった」という指揮官の言葉は、しっかり投手づくりに取り組んできた証だろう。
育てる努力があれば、“複数投手”で戦うことができる。
「1人の投手で心中するという考え方が多いと思うんですけど、そうではない方法もあるというのを提案できた。それぞれの投手にいいところがあるので、そこを生かすことはできる。柱の投手はいますが、継投で1試合を作っていくというやり方を今後も追求していきたい」と村中監督は力を込めた。