神奈川工科大・渡邉啓太 プロ入りした好投手との投げ合いを経験し、急成長【2015年ドラフト隠し玉大学生2】
全国的には無名ながら、神奈川大学リーグで実績を積み重ねる神奈川工科大・渡邉啓太。その原動力は高校時代の充たされない思いにあった。
2015/03/09
Yu Takagi
渡邉啓太(わたなべ・けいた)福島県いわき市出身。いわき光洋高→神奈川工科大創造工学部ロボット・メカトロニクス学科。176cm70kg(本人申告)、右投右打。
エースへの渇望
「ロボットを作ったりはしませんよ(笑)ロボット・メカトロニクス学科といっても、スポーツ・健康生活科学コースなので、体の仕組みがどうとか、そういう勉強です」
朗らかな雰囲気で話ぶりも人懐っこく、体型もさほどガッシリとしていないため普段の姿は、あまり野球選手らしくない。だが、そんな未完成な状態でも、最速145キロのストレートにスライダーやツーシーム、チェンジアップなど多彩な変化球を操り、大学1年春からリーグ戦のマウンドを経験。2年秋にはベストプレーヤー賞を獲得するなど、神奈川大学リーグを代表する投手の1人と言ってもよい右腕だ。
「良い意味で未完というか。これで145キロ出るんだから、体の使い方が良いんでしょう。上半身がとても柔らかいので、まだまだ伸びていくと思いますよ」と新田晃司監督は、その伸びシロに太鼓判を押す。しかし新田監督が初めて渡邉を観た夏、彼の背番号は「4」だった。
福島県いわき市に生まれ育った渡邉は、地元のいわき光洋高校に進学。だがそこに立ちはだかる同学年の好投手がいた。当初は投手一本でその投手と向かい合おうとしたが、「たまたま試合出た時に打てちゃって」と本人が振り返るよもやの活躍。こうして、最終学年は二塁手兼抑え投手として甲子園を目指した。
結局、最後の夏は県4強で敗退したものの、「上半身が柔らかいし、バックスピンのかかった伸びのある球を投げていたので、この子はいいなあ」と観戦に来ていた新田監督の目に留まった。また渡邉自身も「エースでなかった分、大学では1年生から投げて、チームを強くしていきたかった」と神奈川工科大への進学を決めた。
リーグ優勝はなく、プロ野球選手輩出も過去に1人(元ダイエー投手・飯島一彦)しかいない同大ではあったが、公式戦開催もできる人工芝のグラウンドなど環境は充実していた。そして何より、渡邉が最も欲していた「登板機会」があった。