「高校から木製バット」は強打者を減らす? 韓国野球界の功罪。異変もたらした指導法の変化
長距離砲として期待された高卒選手がプロ入り後、金属バットと木製バットの違いに苦しむケースは多々ある。一部では、高校から木製バットの使用を促す声もある。一方、韓国では国際ルールに沿い、高校生も木製バットの使用が義務付けられている。ところが、この木製バットの導入によって、強打者が育たない状況となっているという。(2017年11月16日配信、再掲載)
2020/04/10
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新人最多安打記録樹立も本塁打はわずか…
高校生の筋力は未熟な部分がある。つまり、金属バットを使っていた時代はまだ成長していない筋力でもホームランを打つことが可能だが、木製バットだと筋力の未成長と重なり、ホームランが出なくなる。となると、指導者たちは長距離を狙う打撃よりも、まずコンタクトに気を入れてしまう。
ジョ氏は「金属バットだと遠く飛ばす打撃をするが、木製だとまずピッチャーが投げるボールに“当てる”練習をする」と指摘する。「遠く飛ばせないならまずは中心に当てろ」というのを最優先するのが現場のムードというのだ。
この指導法の変化による明暗はある意味明確だ。今年、韓国野球史上新人最多ヒット記録を塗り替えったイ・ジョンフ(ネクセン・ヒーローズ)の記録はいい例になる。彼は、かつて中日ドラゴンズで活躍した韓国レジェンドの一人、イ・ジョンボム氏の息子だ。彼は今年高卒ルーキーとしてリーグにデビューするやいなやなんと179本のヒットを量産した。もちろん彼も「木製バット世代」だ。
ジョ氏はこの件を受け「木製バットに慣れているからこその成績」といった。すでに慣れているため、フォームを変える必要もないということだ。だが「このままだとホームランバッターは出ない」という。コンタクト中心の指導法はヒット量産には最適だが、ホームランの打てるスウィングではないというのだ。実際、イ・ジョンフのホームラン数はシーズン通して、わずか2本に過ぎない。