“大阪桐蔭時代”が幕開けした10年前の夏。強さの背景にある育成と勝利の両立、名将の後悔から生まれた変革
第100回全国高校野球選手権記念大会が8月5日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。10年ごとの節目には、次代をつくるドラマが生まれる。2008年の第90回大会は、今夏の優勝候補筆頭に挙がる大阪桐蔭が17年ぶりに優勝を飾った年だった。
2018/08/02
Hideaki Ujihara
大阪桐蔭時代の到来、2008年の第90回大会
あれから30年、あれから20年、あれから10年……。
第100回の記念大会になる今大会は何かと過去と比較されることが多い。特に今季は松坂大輔(中日)がプロの舞台で復活を遂げたこともあって、1998年の「松坂世代」が話題に上ることが多い。
ただ、時代の移り変わりという点で言うと、「10年一区切り」とはよく言ったものである。この10年は一つの時代が到来した。
「これ、ホンマに決勝戦やんなぁ」
2008年夏、第90回大会決勝戦。
17-0の大差がついた9回表、大阪桐蔭の部長・有友茂史は、ぼそっと指揮官の西谷浩一監督に語り掛けた。
有友は大差での試合展開に余裕をぶっこいていたわけではない。選手たちが大阪桐蔭のグラウンドでプレーするかのようにはつらつとしていたから、いま戦っている舞台が「甲子園の決勝」であることを忘れてしまいそうになったのだ。
「甲子園の決勝戦ですよ」
西谷監督が力強く言葉を返したあと、歓喜の瞬間は訪れた。
大阪桐蔭が17年ぶりの頂点に返り咲いた。1度目の優勝時はコーチであった2人にしてみれば、紆余曲折を経ての大願成就だった。
「おめでとうさん」
「ありがとうございます」
有友部長と西谷監督は固い握手を交わしただけだったが、それ以後、春3度、夏3度の歓喜を経験した。時代はまさしく彼らのものだった。