史上最強の聖光学院に足りなかったもの。勝負分けたバントの失敗、理想と裏腹な野球に感じた“気持ち悪さ”
福島大会を12年連続で制覇し、夏の甲子園に出場した聖光学院。「史上最強」と言われたが、報徳学園(東兵庫)に2-3で敗れた。競り負けた試合のようにも見えるが、聖光学院は目指す野球ができていなかった。
2018/08/12
「打ち勝つ」こそ、聖光学院のチームカラー
そもそも今大会で聖光学院が目指していたのは、報徳学園のような石橋を叩いて渡る野球ではない。何より、斎藤監督自身がこう語っていた。
「今年のセンバツでは5点止まりだった。だから相手がどこであるかは別にして6点を取ることを目標にしていた。どんな試合でも6点を取ることを目標にして、それができれば、試合に負けたとしても納得して帰ろうと」
甲子園で5、6点を挙げることはそう簡単ではない。
だが、それだけの目標を掲げるのは、斎藤監督自身が今年のチームに手ごたえを感じているからだ。「打ち勝てるやつら」であると。しかし、聖光学院がこの試合開始から執った作戦は5点、6点を目標にしているようには見えなかった。
1点を確実に取っていきたい報徳学園、5、6点を取る野球をしたい聖光学院。目指すところは別なのに野球が全く同じだったのだ。ここに試合のポイントがあったのではないか。
報徳学園の3点はいずれも聖光学院の得点に先行して挙げた。だが、リードしながらも1点を確実に取っていく野球のため、突き放すことができない苦しさもあった。
聖光学院はそこに付け入るべきだった。
それにもかかわらず、報徳学園と同じような攻めを繰り返した。挙句の果てにバントを失敗する。そして、苦し紛れの強攻策が裏目にでたのだ。
「10本くらいのヒットを打って、5、6点というイメージだったんですけど、犠打が絡む堅実な野球が引き出しにあればと思う。バント失敗のケースは、本来は送りバントをするべき人間ではない打順のところに回ってきて、いい巡り合わせではないなと感じていました。試合をやりながら気持ちが悪かったですね」
斎藤監督はそう最後に絞り出した。
史上最強のスケールがありながら、ロースコアゲームを挑んでしまった。斎藤監督のいう「気持ち悪さ」とはその一点に尽きる。
氏原英明