金足農、秋田と東北の夢を背負って勝ち取った準V 「最高のチーム」で20年前の借り返す【全国高校野球】
2018/08/21
Kana Yamagishi
<最終日 決勝 ○大阪桐蔭13―2金足農●>
第100回全国高校野球選手権記念大会は21日、阪神甲子園球場で最終日を迎えた。決勝戦では金足農(秋田)が秋田県勢初、東北勢初となる優勝(秋田)に挑んだが、その夢は大阪桐蔭(北大阪)の前に叶わなかった。
「できれば、最後まで投げさせてあげたかった」
金足農の中泉一豊監督は、この夏の地方予選から甲子園の準決勝まで1人でマウンドを守り、この日の決勝を含め11試合計1517球を投げてきたエースについて試合後こう語った。
初回に3失点と大阪桐蔭打線に捉えられた吉田輝星(3年生)は、4回に宮崎仁斗(3年)に3ラン本塁打、5回には根尾昂(3年)に2ラン本塁打を浴びるなど5回12失点。132球でマウンドを初めてチームメイトに譲った。
指揮官は「大阪桐蔭の打者に神経を使っていて、球の勢いも無くなっていた。その分球数が増えていった」と振り返りながら、最後は「よく頑張ってくれた」と称えている。
一方の吉田は、「序盤は粘れたが、4回ぐらいから下半身が思い通りに動かなかった」と身体の異常を感じていたことを明かし、「そこを大阪桐蔭はコンパクトに狙ってきた」と一挙に猛攻を仕掛けた相手打線に脱帽。
攻撃では、5回に2点目を入れた際に満員の大観衆が拍手を送り金足農を後押しする場面も。その空気は最終回まで変わらなかった。
それでも、雰囲気に飲まれることなく堅実なプレーを積み重ねていった大阪桐蔭に対して、佐々木大夢(3年)は「連覇というプレッシャーがある中で凄いチーム」とその強さを肌で感じた様子。そして、「大阪桐蔭と戦えて良かった」と強敵を相手に挑んだ一戦に納得するコメントを残した。
金足農は1995年(第77回大会)にベスト8進出。その次に出場した1998年(第80回大会)では初戦で明徳義塾(高知)に敗れ、そこから秋田県勢は13年連続初戦敗退。その間、金足農は2度の初戦敗退を喫している。2011年に能代商が3回戦まで進み、その屈辱的な記録は断ち切ったが、金足農としては甲子園に“借り”を返せていないままだった。
しかし、この夏ついに金足農が白星を掴むと、そこから秋田と東北の夢を乗せるまでの怒涛の快進撃。決勝までたどり着いた。
チームメイト、監督、秋田、東北のみんなで“勝ち取った”準優勝という結果に吉田は「地域に支えられて決勝の夢の舞台まで来られた。大会を通じて何度も救われた。最高のチームであり、最高の夏だった」と感謝しながら最後は涙を見せず堂々と前を向いた。