日曜劇場『下剋上球児』原案 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル#4 屈辱の壮行会
2023/10/10
菊地高弘
TBSテレビ日曜劇場『下剋上球児』が10月15日から放送スタートする。同作品の原案となったのが、「下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル」(出版社・カンゼン)だ。2018年夏の甲子園に初出場した三重県立白山高校。10年連続県大会初戦敗退の弱小校が、なぜ甲子園に出場できたのか。同書から第一章を公開する。
屈辱の壮行会
「どうせコールドで負けるんやから、壮行会なんかやらんでええやろ!」
体育館に大声が響き渡り、発信源の周囲に下卑た笑いが広がった。
2013年夏の三重大会に臨む野球部の壮行会。体育館の壇上に上がっていた新監督の東、東に請われて野球部部長に就いた川本、そして11人の野球部員たち。彼らに浴びせられたのは激励ではなく、生徒からの心ないヤジだった。
2年生の隆真は「悔しい思いはありましたが、勝って見返してやろうと思った」と屈辱を飲み込んでいたが、それ以上に怒りに震えていたのは、監督の東だった。
「ヤジを飛ばしたヤツもそうですけど、それを止めない教員にも腹が立ってしょうがなかったんです。教員に元気がない。これが白山高校の現状なんかと思いました」
とはいえ、チームに自信や手応えがあったわけではない。
東が赴任時にいた野球部員5名に加えて、新入生が4名入部したものの、なかには試合に出せないレベルの選手もいた。東は部員集めに躍起になり、一度は退部した者をひとり呼び戻し、さらに自分が担任を務める3年生のクラスに中学時代に野球部だった生徒がいると聞き、「頼むで、出てくれ」と依頼。その助っ人部員がセンターのレギュラーとして試合に出てしまうようなレベルだった。
指導陣は監督に東、部長に川本を据え、若い講師の森田亮太がコーチを務め、佐々木崇が副部長として支える体制になった。