台湾プロ野球ラミゴモンキーズ売却へ。人気絶頂、リーグ屈指の強豪が身売りせざるを得なかった理由
台湾プロ野球のLamigoモンキーズが3日、球団を売却する意向を表明した。今後は、シーズン中に引き継ぐ企業を探していく模様となっている。人気、実力ともにリーグトップを誇る球団が、なぜ売却に踏み切ったのだろうか。
2019/07/06
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「選手の給料は16年間で3倍になった」
発足当初、平均入場人数はわずか3000人。2009年には大規模な八百長問題の影響を受け、一時期は平均2000人ほどまで集客が落ち込み、当時のLa Newベアーズにとって苦しい時期が続いた。ラミゴに改名後は、手を尽くして平均7446人まで入場者数を増加させたが、収益自体は伸び悩んでいる。
主な原因は、チケット料金が変わらないことにある。球団が発足した16年前から、チケット代はおよそ300台湾ドル(約1000円)のままである一方、プレーする選手たちの給料は16年前から大幅に増加。ラミゴの親会社LaNewの代表取締役である劉保佑氏も「選手の給料は16年間で3倍になった」と述べ、たとえ入場者数が増えても、それ以上に選手や球場の費用、あるいはファン獲得のための新たな試みによってコストは増加の一途をたどっていることがわかる。
また、台湾プロ野球の試合の質が下がっていることも一要因だ。2016年以降、台湾リーグは打撃力を大きく向上させたが、それに比して投手の実力低下が顕著となった。昔のファンは、優れた台湾投手の対決を楽しみたいが、いま台湾リーグには国を代表するような台湾人ピッチャーは不在。いくら打撃がよいと言っても、試合時間が長く、本来の台湾野球がもつ対決の醍醐味も失ったとなると、ファンの心をつなぎとめることは難しい。これによって、台湾リーグの入場者は、その多くを若者が占めることとなっている。
チケット代は安く、選手の給料が上がり、さらには若いファンを飽きさせない工夫を続ける必要がある現在の台湾リーグ。ほかの3チーム(中信、統一、富邦)は大手企業で、まだ経営を続けることが可能だが、中小企業のラミゴは、この先の経営が難しくなるとみて、球団として一番脂ののった今、身売り宣言をするに至ったのだ。