「気づく力を引き出す」。吉井理人氏が自身のコーチングを見つめ直すきっかけとなった大学院での学び
選手としてもコーチとしても、実績を積み重ねた吉井理人氏(千葉ロッテマリーンズ1軍投手コーチ)が、コーチングを学ぶために筑波大の大学院に入学したのが2014年春のこと。ここでの経験が、自身のコーチングを見つめ直す大きなきっかけとなった。『新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術』(川村卓著)から一部抜粋で公開!(前編)
2019/07/17
自分を客観的に見る力を養う
――実際に大学院での学びを終え、投手コーチとして現場で活用できているのはどんなことですか。
今、コーチングの中心になっているのが、ゲームの振り返りです。難しい言葉を使えば「内省」。これは、大学院でスポーツ心理学の先生に教わりました。じつは、アメリカでプレーするようになってから、日記を付けることを習慣づけていたのですが、先生によると、こうした行為が自分を客観的に見ることにつながっていたそうです。ただ書くだけでなく、「自伝」を作るような気持ちで、そのときの心情も入れながら書く。書くことによって、自分の中にもうひとりの自分を作ることができていました。
――自分で自分をコーチングしている感覚でしょうか。
その感覚に近いと思います。プロの現場では、ぼくの質問によって、相手の考えを引き出すようにしています。たとえば、先発投手であれば全員ではないですが、登板の翌日に1対1でディスカッション。前日の登板に関する自己採点、良かった点、昨日の試合に戻れるなら何をしたいか、主にこの3点を聞きながら、考える力や気づく力を引き出しています。
――吉井さんの立ち位置としては?
できるだけ、聞き役に徹します。こっちから言いたいことがあっても、まずは選手の主張を聞いて、それがどんなに間違っていたとしても、「あ、そうなんや。そうか、そうか」と受け入れる。でも、ぼくは未熟なので、「そうか。でもな、こういう考えのほうがええんちゃうか……」と、自分で言ってしまうんです。まだ、勉強中です。
吉井理人(よしい・まさと)
1965年4月20日生まれ。和歌山県出身、県立箕島高等学校卒業。1983年ドラフト2位指名で近鉄バファローズへ入団。1995年、ヤクルトスワローズへ移籍、1997年、MLBニューヨーク・メッツへFA移籍。その後コロラド・ロッキーズ、モントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)で活躍。2003年、オリックスブルーウェーブで日本復帰。2007年、千葉ロッテマリーンズで現役引退後、北海道日本ハムファイターズ、福岡ソフトバンクホークスでコーチを務め、2019年シーズンから千葉ロッテマリーンズ投手コーチに就任。
<書籍概要>
『新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術』
定価:本体1700円+税 川村卓著(筑波大学准教授)
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