やらされていることは長続きしない。吉井理人氏が語る「考えて行動する習慣」へのアプローチ
選手としてもコーチとしても、実績を積み重ねた吉井理人氏(千葉ロッテマリーンズ1軍投手コーチ)が、コーチングを学ぶために筑波大の大学院に入学したのが2014年春のこと。ここでの経験が、自身のコーチングを見つめ直す大きなきっかけとなった。『新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術』(川村卓著)から一部抜粋で公開!(後編)
2019/07/18
“自分の言葉で”話せるように
――お話を聞いていると、コーチというよりはカウンセラーのようですね。
その通りですね。選手は自分で話しているうちに、「ここはもっと突き詰めて考えていかないといけない」ということに気づいていきます。たとえば、追い込んでから決めにいったフォークが浮いてしまい、打たれたとします。「次は低めに投げるようにしたいです」では意味がなくて、「なぜ、高めに浮いてしまったのか」「次、同じ場面で低めに投げるにはどのような取り組みが必要なのか」まで、自分の言葉で話せるようにならなければいけません。
――こうした思考方法は、小学生や中学生にも生かすことはできますか。
できると思います。たとえば、ピンチで打たれたときに、「どんな気持ちだった?」と聞くことによって、自分の感情に気づくことができます。それが、打たれたという結果だけを見て、「何やってんだ、しっかり投げろ!」と怒っても、「ハイ!」だけで終わってしまうわけです。
――残念ながら、指導の現場で目にする光景ですね。
何より大事なのは、子どもの頃から自分で考えて、行動する習慣を付けてほしいということです。
――指導者が頭ごなしに怒ったり、叱ったりすることに効果はないですか。
これはスポーツ心理学の世界ではもう答えが出ているのですが、効果がないわけではありません。でも、その効果は一瞬です。他人にやらされていることになるので、モチベーションは長続きしません。