【第2回】支える人ありきの野球。 米ピッツバーグ『世界一野球を”楽しむ”大会』運営インタビュー編
暗いニュースが続く日本野球界。野球の一つの本質である”楽しむ”という原点に立ち返り、現状を見つめなおすべきかもしれない。そのヒントは、米ペンシルバニア州ピッツバーグにある小さな街、フリーポートにあった。小さな国際大会、『フリーポート・インターナショナル・ベースボール・インビテーショナル(FIBI)』の現地リポートをお届けする。第2回は、副主催者のデーブ・ブレステンスキー氏の独占インタビューだ。
2019/08/31
佐藤温
ブレステンスキー氏はフリーポート在住で、FIBIの副主催者を務める。自身も捕手や外野手として学生時代には野球をプレーし、現在は大会を動かす立場で地元のスポーツ振興に携わっている。今回はそんな彼へのインタビューを通じ、大会の意義や、アメリカ流のスポーツ論を探っていく。
―大会のコンセプトを教えてください。
『まずは、世界中の選手を呼ぶこと。そして、トロフィーを賭けて戦うのではなくて、みんなが大好きな野球を楽しくプレーすることを目標にしているよ』
『大会創設者のサニーがこのイベントを提案したときは、みんながクレイジーだと言った。費用、集客、人員とあらゆる問題が山積みだったからね。でも、今年でもう25年目の開催になる。彼は亡くなってしまったけど、地元全体が彼の遺志を受け継いでいることの証拠だね』
―実際の運営はどのように行われているのですか?
『球場は、自治体や学校が提供してくれる。ユニフォーム、Tシャツ、最終日の花火などは地元の企業がスポンサーとなって提供してくれているよ。そして、このあたりの住人たちのボランティアも重要だ。球場設営、試合進行、売店など、大会を支えてくれている』
-海外からの参加者について教えてください。
『彼らは、ホストファミリーたちの提供する住む場所や食事を利用したり、ホテルで宿泊したりする。できる限り、彼らには普通のアメリカの生活を体験してほしい。仕事や学業のための滞在ではできないような、家庭的な休日の過ごし方だったり。たくさん友達を作って、母国でその体験を共有してくれたらと思っているよ』
―日本球界では、若い選手の酷使問題が話題になっています。
『(特に大船渡高校・佐々木朗希選手について)クレイジーだ。アメリカでは、若い投手の投球制限、登板制限のガイドラインがさらに厳しくなっていく流れなんだ。すぐに現場を変えていくのは難しいと思うけど、日本球界が良い方向に変化していくことを願っているよ』
―FIBIの今後のビジョンを教えてください。
『もっとたくさんの国から参加者が増えてほしいし、もっと大会が楽しくなるような工夫をしていきたい。年齢層を下げて、小学生たちにもプレーの機会を提供したいとも考えているよ』
―日本の野球界にメッセージをお願いします。
『何より大切にしてほしいのは、野球を楽しむこと。ボールを追いかけたり、泥にまみれたり、必死でベースを駆け抜けたり。野球を愛する気持ちは世界共通だから、日本のみんなも楽しくプレーしてほしいと思う。あと、投げすぎにはくれぐれも気を付けてくれよ!(笑い)』
第1回で概説した通り、FIBIには優勝という概念がない。しかし、選手も観客もプレーを大いに楽しんでいる。地元全体が盛り上がり、活気づくのが体感できるのだ。ブレステンスキー氏が『enjoy the game(野球を楽しむ)』という表現を多用して語ってくれた運営サイドの思いは、国境を越えて世界に広がっていく。
取材・文 佐藤温