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技術指導で自信を持たせることが、心の成長に。「打撃伝道師」佐相監督が語る激戦区神奈川を勝ち抜く指導論<Part2>

昨年、夏としては初のベスト4入りを果たした県立相模原。強豪校の激戦区神奈川でいかにして勝ちあがっていったのか。「打撃伝道師」と呼ばれる佐相眞澄監督流の指導論をまとめた一冊、『打撃伝道師 神奈川から甲子園へ――県立相模原で説く「コツ」の教え』(佐相眞澄著)から一部抜粋で公開。

2020/02/21

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選手との信頼関係を築くために

 「心技体」という言葉があるが、指導者によって何をどんな順番で教えるか、考えがわかれるところだろう。私の場合はピラミッドで考えると、技と体が一番下にあり、そのうえに心が乗ってくる。技と体が変わってこなければ、自信がつかないし、「私立を倒してやろう!」という気持ちも生まれてこない。
 
 でも、体はすぐには変わらない。トレーニングの成果が出るまでには時間がかかる。じつは、一番変化を感じやすいのが技術なのだ。川崎北でも、県相でも、赴任してすぐにバッティング指導を行い、選手たちが「この監督の言うことを聞いておけば、打てるようになる」と思ってもらえたことで、信頼を得られるようになった。もちろん、技術を定着させていくには時間がかかるが、トップの位置や下半身の使い方を変えたりすることで、短時間でも「お!」と思わせることはできる。それは、投げることも守ることも一緒。何かアドバイスを送ったあとに、その選手のプレーが変わらなければ、指導者としての存在感がなくなってしまう。
 
 中学生の場合は、「お前なら打てる!」というある程度の暗示も通用したが、高校生は暗示が通用するほど幼くない。だからこそ、技術指導によって、「これで打てる!」と自信を持たせることが、その先の心の成長にもつながっていく。最初から心の指導をしても、ある程度の技術と体力がなければ、土台のもろいピラミッドになってしまう。
 
 高校生もいろいろな性格の子がいるが、野球選手である限りは、誰もが「うまくなりたい」「もっと打てるようになりたい」と思っているもの。はじめは、こちらの指導を素直に受け入れない選手であっても、選手自身がちょっとでも良くなる手ごたえをつかんだら、だんだんと心を開いてくれる。特に異動してすぐの3年生は、前監督の影響が残っていることが多いので、「おれにはおれの打ち方がある」と良くも悪くも頑固な一面がある。
 
 指導者としては、選手との信頼関係を築くためにも、技術指導の引き出しを数多く持っておきたい。バッティングの詳しい指導法は、第3章で説明しているので、ぜひじっくりと読んでいただきたい。

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