『誰かのために』という想いが勝利へ繋がる。米子東・紙本監督を変えた、カリスマ教師の教え
「打撃指導」に定評のある名将が球児へ贈る、一気にバッティングを進化させるマル秘上達メソッドを収録した『高校野球界の監督がここまで明かす!打撃技術の極意』(大利実著、5/26発売)。今回は2019年春、部員18名(女子マネージャー2名含む)で23年ぶりにセンバツに出場を果たし「古豪復活」を印象付けた米子東・紙本庸由監督の章から一部抜粋して公開します!
2020/06/11
『原田メソッド』で気づいたこと
15年近く前、初任の倉吉東に勤めているときに、転機になった出来事があった。
「初めての担任を持ったとき、1年生の5月の定期テストの成績が悪く、先輩から『紙本くん、最初はこんなもんだよ』と言われたんです。正直、『え、おれのせいじゃないだろう?』と思いました。入学したばかりの5月ですよ。でも、その言葉が悔しくて、自分で五段階欲求説を勉強して、あの手、この手を使って、クラス経営をしていきました。そうしたら、最後の2月のテストで、全教科全科目ともにうちのクラスが学年1位を獲ったんです」
そこから、さらに興味を持ち、専門家のもとでコーチング論を学ぶようになった。目標設定、内発的動機付けの重要性、承認欲求を育むための声掛け……、監督としてチームを持ったときに、選手のやる気を引き出せるように、お金と時間を自分自身に投資した。
母校・米子東に赴任したのが2013年のこと。前述のとおり、就任5年目に決勝進出を果たしたが、甲子園を目前にして敗れた。
「惜しいとか、ここまで来られたからよかったなんて思っていたら、一生、勝てない。そこで出会ったのが、原田隆史先生(株式会社原田教育研究所)の『原田メソッド』でした。今までの自分は、いいとこ取りでつまみ食いしていたところがあったのですが、原田メソッドはすべてがひとつになっていると感じて、勉強を始めました」
「教育の力で世界中を元気に」をモットーに、人材育成に力を注ぐ原田先生。かつては、大阪の公立中学校の教員を務めて「カリスマ体育教師」と呼ばれたこともあった。紙本監督は、インターネット上で受講できる「原田メソッド認定パートナー養成塾」に入塾し、計35時間の学びを経て、認定パートナーの資格を得た。
原田先生からの教えを受け、米子東で実践していることのひとつに「長期目的・目標設定用紙」がある。シートの中に「目的・目標の4観点」という欄があり、未来に向けたゴールを、有形/無形/私/他者・社会の4観点から考え、思考を整理していく。紙本監督は自ら取り組む中で、自分の想いに改めて気づいたことがあるという。