「根拠のある奇跡を」 グラウンドを失くしても埼玉で躍進する東京成徳大深谷
浦和学院や春日部共栄など全国区の強豪校がしのぎを削る埼玉の高校野球で、東京成徳大深谷が春夏秋通じて初の県大会4強入りを果たした。グラウンドを失い3年生部員17名のみの選手たちで戦う今夏、初の甲子園出場を目指す。
2015/07/12
高木遊
1球でも多く
この日の練習場所であるバッティングセンターに到着すると、東京成徳大深谷の選手たちは、一心不乱にテキパキと動く。ものの5分もしないうちに練習が始まり、1時間の使用時間が終わると、今度はあっという間に片付けを終え、選手たちはマイクロバスに急いで乗り込んだ。
学校と練習場所を往復する車内では、17人の選手たちでミーティングをし、課題を洗い出す。運転手を務める泉名監督はそれに耳を傾けながら、時にアドバイスを付け加える。そして、学校に戻ると、早々と靴を履き替え、今度は体育館ですぐにまた練習が始まった。
彼らにとっては、キャッチボールやティーバッティングの1球1球が、これまで以上にかけがえのないものとなっている。
泉名監督も「(グラウンドが無くなり)選手に知恵はついたと思います。バッティングセンターも狭いスペースを有効に使っていますよね。今日も奥でバントをやっていましたけど、あれは“ここでもできるはず”という生徒の発案です」と目を細める。
攻守の中心である捕手の吉田龍弘が「もっと野球の練習をしたい気持ちの時もありましたけど、冬場にこれでもかというほど走って体力と根性がつきました。今は他ではできない経験をさせてもらって感謝しています」と話すように、選手たちにも後ろ向きな気持ちは感じられない。
写真:決して広いとは言えないスペースの最大限に使い、練習に励む東京成徳大深谷の選手たち【高木遊】