【横尾弘一「プロにつながる社会人野球」】ドラフトに対して個性的な考え方を持って”その日”を待つ――JX-ENEOS・石川駿
ドラフト会議で社会人を指名する場合、球団は当然即戦力として期待している。今年は、どのような即戦力を獲得するのだろうか。プロのスカウトらが注目する一人の社会人選手がいる。JX-ENEOSの石川 駿だ。その石川のドラフトに対する考えは他の選手とは少々違う。
2014/10/12
支えてくれた明大の先輩、宮澤健太郎の存在
JX-ENEOSでも、入社時のキャプテンが明大の先輩でもある宮澤健太郎だった。石川が闘志を内に秘めるタイプだと見た宮澤は、『おまえらしくやればいいよ』と声をかけ、キャッチボールや個人練習で石川とペアを組む。
次第に石川には、自然な形で名門の野球が染み込んでいったのである。そうして目立つ実績を挙げ、プロを意識するようになった石川は、周囲のアドバイスを受けながら、こんな考え方を持つようになる。
「高校や大学からのプロ入りは就職ですが、僕ら社会人にとっては転職。ならば、現状より自分の力を発揮できるチームに移らなければいけない。その一方で、社会人には『なぜ、この人がプロへ行かなかったんだ』と思えるような選手がたくさんいます。つまり、これからの野球人生は、プロかアマチュア(社会人)かという見方ではなく、自分にとって最良の環境でプレーすることが第一。せっかくここまで続けられた野球人生なのだから、ずっと大切に過ごしていきたいと考えているんです」
だから、冷静に、慎重に。夢や憧れだけで通用する世界ではないからこそ、石川はこれまでと変わらず練習に取り組み、どこかの会社(球団)がヘッドハンティングの声をかけてきたら、自分の進むべき道を考えようとしている。
「来年はどのチームでプレーしているんでしょうね」
最近では珍しく気骨のある男・石川は、そう言って穏やかな笑顔を見せた。