【高校野球】大阪偕星学園・山本晳監督が明かす「強豪校の倒し方」 元補欠たちと挑む甲子園
昨夏甲子園優勝の大阪桐蔭を大阪府大会準々決勝で破り、初の甲子園出場を決めた大阪偕星学園。波乱万丈の山本晳監督が鍛え上げた選手たちが今日の比叡山高校戦でいよいよ甲子園デビューする。
2015/08/08
補欠だった選手を鍛える
ある夜、彼は「自分はマスコミを信じていないのだ」と体の中から何かを吐きだすような表情で言ったことがあった。
倉敷高校で監督を務めていたとき、詐欺容疑で逮捕されたのだという。
「こちらは容疑を認めず、結局不起訴になったんです。弁護士の先生に相談すると、監督が逮捕されたことは理解に苦しむと言ってくれた。マスコミにもそう説明しましたよ。でも、一度容疑を掛けられたという新聞報道が出ると消えない。あのときは家族が本当に滅茶苦茶になっちゃいました。そして今の高校が拾ってくれたんです」
ぼくも広い意味で報道に関わる人間である。彼の話を聞いて申し訳ない気分になった。彼は家族を倉敷に置いて、大阪に単身赴任し、選手と一緒に寮に寝泊まりしていた。それを見てとったのか、彼は表情を明るくして話を変えた。
「大阪はね、本当に難しいんです。大阪桐蔭と履正社が才能ある子をがっさりと持って行く。うちに来る子はみんな補欠です。そんな子を鍛えているんです」
楽しい酒であっという間に時間が過ぎ、東京行きの最終の新幹線に乗り遅れてしまい、此花学院の寮に泊めてもらったことがある。翌朝、顔を合わせた選手たちはみなきびきびしており、礼儀正しかった。いつの日か、全国で最も厳しい地区の一つである大阪府予選を勝ち抜くことができればいいなと願っていた。ただ、難しいことも重々承知していた。