高校野球の本質とは何か? 相手の主軸に真っ向勝負で挑み、華々しく散った大阪偕星
13日甲子園球場で行われた二回戦、大阪偕星対九州国際大学付属高校の対戦は打撃戦の末、九州国際大付が10対9でサヨナラ勝ちをした。この試合でも大阪偕星を率いた山本晳(セキ)監督は、普段から選手に伝えている通り、正々堂々と真っ向勝負で挑んだ。
2015/08/14
ずる賢い生き方を子どもたちに見せたくない
13日甲子園球場で行われた二回戦、大阪偕星対九州国際大学付属高校の対戦は凄まじい打ち合いとなった。
大阪偕星は15安打、九州国際大付は10安打、ホームランが両チームで4本――最終回に1点を挙げた九州国際大付が10対9でサヨナラ勝ちした。
試合が終わり甲子園を後にする大阪偕星の山本晳(セキ)監督に、九州国際大付の三番・岩崎魁人、四番・山本武白志の二人は敬遠するという手もあったのではないかと訊ねた。
大阪偕星の投手、光田悠哉は岩崎に1本、山本には2本の本塁打を浴びている。
特に5回の山本のスリーランは歩かして満塁策という手もあったろう。回が進むうちに、九州国際大付の主軸打者は光田のストレートにタイミングが合ってきていたのだ。
「うちは逃げるというのは教えていないんです。本当は交わすというのもあったかもしれません。真っ向勝負でどこまで力が通用するのかやらせる。光田の持ち味はストレート。自分の一番いいボールで勝負させる」
関西地区は前回大会の優勝校、大阪桐蔭、あるいは履正社などの強豪校がひしめいているため、人材の確保が難しい。大阪偕星は、他の学校が手を出さなかった〝問題児〟あるいは〝補欠〟たちを山本が徹底的に鍛え、甲子園初出場にこぎ着けた。
高校野球の結果は選手の進路はもちろん、指導者の評価にも直結する。そのため、勝つためには手段を選ばない学校もあるという。
例えば――。
走塁中アウトのタイミングなのでわざと守備妨害してみる、あるいはカウントが悪くなった投手が四球ではなくダメージを与えるためにわざとボールをぶつける――といった類のことだ。
韓国でプロ野球選手経験のある山本はこうしたプレーを唾棄している。
「プロでは、よくあることです。でもそういうことをしたくてぼくらは高校野球をやっているんじゃない。野球の素晴らしさとか楽しさを子どもに伝えたいからやっている。明らかに向こうがやってくるときは、次やったらこっちもやってやろうかと思うこともある。でも、それをやったら野球人でなくなる」
いつも正々堂々とやれとか、心を美しくしろと普段から言っている人間が、そんなコトできないじゃないですかと山本は笑みを浮かべた。
「特にうちのような学校に来る子は、大人の狡さをしっかりと見てきている。ずる賢い生き方を子どもたちに見せたくないんです。真っ向勝負でやらせる。そういう考えじゃないと子どもは真っ直ぐに育たないですよ」