プロ野球でも、技術指導以外に求められる人間教育。高校生指名から問われる球団の姿勢
今年のドラフト会議でも上位で高校生が指名される可能性が高い。ここ数年は田中将大、藤浪晋太郎、大谷翔平ら高卒1年目からチームの中心選手として活躍するケースはあるが、こういった道を歩む選手はごくわずかだ。基本的には数年後を見据えた指名になるが、その選手の"伸びしろ"に期待する場合、球団側にもその選手をどのように育てていくのか。確固たる未来図が求められる。
2014/10/15
周囲の注目と期待に潰されないメンタル力が必要
素材のよさに期待するか、人間を評価するか――。
一部のスーパースターを除き、高校生は即戦力になるのは難しい。では、何に期待をして指名するかといえば、ズバリ、伸びしろだ。
今秋のドラフト候補である早稲田大の中村奨吾は、あるインタビューで、同い年で小学校では同じリーグだったという山田哲人(ヤクルト、履正社からドラフト1位で入団)についてこんなことを言っている。
「正直、今の活躍はすごいと思います。同じ4年間でも、職業でやっている4年間と学生としてやっている4年間は違うのかなと」
高校時代の山田を見て、今季の193安打、29本塁打、打率.324というここまでの活躍を予想した人は決して多くなかったはず。想像を超える成長があるのが、高校生の魅力なのだ。
今ドラフトでも、上位指名候補に挙げられている高校生がいる。
最速157キロを誇る昨春のセンバツ準優勝投手・安樂智大(済美)、昨夏の甲子園優勝投手・高橋光成(前橋育英)、最速150キロの速球に加え、多彩な変化球を操り夏の甲子園で優勝候補筆頭の東海大相模に土をつけた松本裕樹(盛岡大付)、高校通算73本塁打の18U全日本の主砲・岡本和真(智弁学園)らだ。
彼らのすごさは高校野球ファンには説明不要だろう。誰が見ても素材に恵まれた素晴らしい選手たちだとわかる。
だからこそ、ここで注目したいのは各球団の姿勢、見方だ。
好素材であることは間違いない。では、何に焦点を当てて評価をくだすのか。
挙げられるのが、技術以外の部分だ。
例えば、メンタル面。注目される中でどれだけ自分の力を出すことができるのか。
2年生で好結果を残した安樂と高橋はともに3年生になり、甲子園に戻ることはできなかった。高橋は言う。
「やっぱり去年と一番変わったのはそういう部分です。野球よりも少し大変でした」
昨夏の甲子園に出場した時点では、好投手といわれてはいたものの、それほど注目されていたわけではない。だが、〝甲子園優勝投手〟の肩書きを背負った今年は、周囲からの注目と期待とも戦わなければならなかった。
これは、安樂も同じ。彼らはドラフト上位指名が濃厚。入る球団によっては、キャンプからマスコミに追いかけ回される可能性もある。
球団やファンの期待が大きい中、マイペースで調整することは簡単ではない。
スタートでつまずいてしまうと、将来にも影響を及ぼしかねない。早く結果を出すことを求められる中、周りに踊らされず、自分自身で将来の設計図を描いて練習に取り組むことができるか。