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日体大・辻孟彦コーチが語る投手育成論。「自分を戻すための引き出し」こそが必須スキル【前編】

2021/07/20

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「まずは球速を上げること」

 投球フォームに関しては、体作りと並行して、座学から入っていく。どういう体の使い方ができれば、スピードが上がっていくのか。パワーポイントを使ってレクチャーすることもある。

「まずは、球速を上げることを重要視しています。大学生のうちに小さくまとまってほしくありませんから。球速が上がるということは、腕の振りが良くなり、リリースでボールに力を加えることができている証。この感覚があれば、変化球も自然に良くなっていくものです。
 
大学生の場合、トレーニングでしっかりと体を作っていけば、スピード自体は上がっていきますが、ここで大事なのは、どうしてスピードが伸びたのかを自分自身で理解すること。体重移動ができるようになり、下の力を上に伝えられるようになったとか、いろいろな要因がありますが、自分でわかることが大事。怖いのが、よくわからないのにスピードが出てしまっている状態です。こうなると、調子を崩したときに戻る場所がなくなってしまいます」
 
 プロ野球の世界で3年過ごした辻コーチ。毎年、素材豊かなピッチャーが入団し、ストレートの速さや変化球のキレに驚かされてばかりだったという。それでも、高校を卒業したばかりのピッチャーと、社会人出身のピッチャーでは決定的な違いがあったという。
 
「高卒でもすごいピッチャーはたくさんいました。キャンプのブルペンでえげつない球を投げている。でも、ファームの試合で少し打たれ始めると、『あれ?』となってフォームが崩れていく。経験の浅さからくるものだと思いますが、自分を戻すための引き出しが少ない。一方で、社会人上がりのピッチャーは自分自身のことをよく知っているので、平均的にいいパフォーマンスを発揮できる。この違いは大きいと思います」
 
 
後編へつづく)
 
 
辻孟彦(つじたけひこ)
1989年生まれ、京都府出身。京都外大西高から日本体育大学へ進学。4年春に首都大学リーグ戦で優勝、MVPに輝く。2011年、中日ドラゴンズにドラフト4巡目指名を受け入団。2014年に現役を引退、2015年より日体大の投手コーチとして指導者の道を歩む。これまで松本航、東妻勇輔、吉田大喜、森博人をプロへ送り出した。2018年から日本体育大学大学院コーチング学専攻、2020年3月に修士(コーチング学)の学位を取得。
 
大利実

【書誌情報】

『高校野球界の監督がここまで明かす! 投球技術の極意』


(著者:大利実/280ページ/四六判/1700円+税)
「投球指導」「投手攻略」マル秘上達メソッド
 
【収録高校】 常総学院/島田直也監督 県立大崎/清水央彦監督 八戸工大一/長谷川菊雄監督 立花学園/志賀正啓監督 三重・海星/葛原美峰アドバイザー
 
【日体大】 辻孟彦コーチ
 
特別収録 プロが語る『投球論』 【制球力向上】吉見一起(元中日)【捕球技術】谷繁元信(元横浜・中日)
 
 
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